著者
森岡 暁 馬場 正三
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1490-1500, 1988

家族性大腸腺腫症患者26例, 15家系の随伴病変を検討することを目的とし, まず家系別症例について手術時のポリープ数, 微小腺腫密度について検討した. また術前拡大色素内視鏡検査を行うことにより微小腺腫, 単一腺管腺腫を観察した. これらの症例における顎骨潜在骨腫, 上部消化管ポリープ, 眼底の色素異常, 甲状腺腫, デスモイド腫瘍など随伴病変の頻度を検討し, その臨床上の重要性を検討した. 特に眼底色素斑が患者に高率に認められ, 子供の保因可能者の50%に認められ, しかも1歳2カ月ですでに認められた症例もあつた. したがつて Gardner 症候群のみならず広くFACの保因可能者の marker として重要な位置を占めるものと考えられる.
著者
木俣 博之 馬場 正三
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.226-234, 1998-04

大腸癌の発生予防を目的として,ヒトのAPC遺伝子codon 1309と相同の部位に変異を持つマウスに,非ステロイド消炎鎮痛薬剤であるpiroxycamを投与し,その腺腫増殖抑制効果にっき検討した.その結果,piroxycam投与群はcontrol群に比し,ポリープ数および大きさで有意に抑制効果が認められた.また臨床例において,家族性大腸腺腫症患者で予防的結腸全摘術を行い,残存直腸の腺腫のサーベイランス中の3症例に対し,piroxycam坐剤の実験的投与を行った.10週間の投与で,3例ともに残存直腸内の腺腫の縮小,消失が認められ,piroxycamの腺腫発生に対する予防効果が認められた.従来FAPの予防的切除として行われてきた結腸切除術,回腸直腸吻合術式での,術後残存直腸からの腺腫発生の予防的投与に有用であると考えられた.
著者
木村 影方 佐々木 正夫 馬場 正三 宇都宮 譲二 有吉 寛 笹月 健彦
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

わが国における高発がん家系の実態調査を行い、大腸がん、乳がんそれぞれで、全がんの約1〜2%が高発がん家系に由来することを見出した。また、これらの家系では、同一部位がんのみならず、他臓器がんや重複がんの発生頻度が高かった。ことに大腸がん多発家系由来の大腸がんでは、これまでの報告と異なり、わが国では低分化腺がんが比較的多いことが初めて示された。一方小児がん登録調査により、2次がん発生には遺伝的要因が深く関与すること、また親の放射被爆歴の多いことが明らかになった。ついで、このような高発がん家系由来試料を用いることにより、複数の家系で、hMSH2およびhMLH1(大腸がん)、BRCA1(乳がん)遺伝子継世代変異を同定した。また大腸がん抑制遺伝子のひとつが既知のDCC遺伝子よりセントロメア側に存在することを見出した。一方大腸がん多発家系の大腸がんでは約半数にマイクロサテライト不安定性が認められるが、APCおよびDCC変異が低率であることから、その発がん機構は一般大腸がんとは異なることが強く示唆された。さらにマイクロサテライト不安定性を伴う大腸がんではTGFBRII、POLB、B2M、WAF1変異が特異的に生じていることを明らかにした。また肺がんの発生にはマイクロサテライト不安定性は関与していないが、単塩基リピート部の欠失は肺がんハイリスクグループである中国人女性に高頻度に生じていることを見出した。さらに乳がんおよびその前がん病変は全て単クローン性であることを証明した。一方白血病発症ハイリスクグループであるファンコニ貧血の実態を調査し、発症年令や白血病危険率は米国と同様であるが、わが国では約180人に1人がファンコニ貧血遺伝子の保因者であると推定された。