著者
岡村 和麿 田中 勝久 木元 克則 清本 容子
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.191-200, 2006-03-05
被引用文献数
8

2002年および2003年の夏季に有明海奥部・中部域および諫早湾において,表層堆積物の含泥率,酸化還元電位,有機炭素量,全窒素量,クロロフィル色素量および有機炭素安定同位体比(δ^<13>C)を測定した。有機炭素量は,有明海奥部の鹿島沖泥質平坦地の六角川と塩田川に挟まれた干潟浅海域および諫早湾の小長井沖から湾中部にかけての海域において,高濃度(>18 mgC gDW^<-1>)を示した。クロロフィル色素量は,有明海奥部の塩田川沖海底水道北部周辺海域および諫早湾の中部域において,高濃度(>100μg gDW^<-1>)を示した。δ^<13>Cは,有明海奥部の浅海域で低く(<-22.0‰),諫早干拓潮受け堤防付近を除く諫早湾と有明海中部域で高い値を示した(-21.0〜-19.4‰)。クロロフィル色素量およびδ^<13>Cの分布様式から,諫早湾では植物プランクトン起源の有機物が高濃度に堆積していることが推察され,実際に広い範囲で酸化還元電位が低下していることが観測された。潮流速の低下した諫早湾および諫早湾湾口の周辺では,赤潮植物プランクトン起源有機物の堆積により貧酸素水塊の頻発や慢性化が危倶される。