著者
木原 深雪 北岡 和代
出版者
金沢大学つるま保健学会 = Tsuruma Health Science Society, Kanazawa University
雑誌
金沢大学つるま保健学会誌 = Journal of the Tsuruma Health Science Society, Kanazawa University (ISSN:13468502)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.1-10, 2014-12-26

本研究は、アルコール依存症の治療過程で重要な課題であるアルコール依存症者の感情体 験を明らかにし、看護ケアの方向性を検討することを目的とした。断酒期間1 年から15 年 までのアルコール依存症者20 名に半構造的面接を行い、断酒期間別に質的帰納的に分析した。 その結果、断酒期間5 年未満群の参加者は周囲の状況を被害的に感じていたために孤立を深 めていたが、自助組織に通っているうちに仲間と心が通じるようになっていた。断酒期間5 - 10 年未満群の参加者は客観的に自己を見つめながら、酒を飲まない生活習慣を形成して いた。断酒期間10 - 15 年群の参加者は長期間断酒していてもまだ自己の復興の途上である ことを自覚しながら、断酒継続の努力を続けていた。以上、断酒期間別の感情体験に応じた 看護ケアを考えていくことが重要となることが示唆された。また、参加者は孤立しがちな気 質に加え、防衛手段として飲酒を続けたために孤独を深めていた。アルコール依存症者に関 心を持ち続け、必要な他者とつないでいく支援を行っていくことが看護職に求められている と考えられた。