著者
木原 高治
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.164-174, 2002-12-20

経済のグローバル化・ボーダレス化の進展に伴い企業活動の国際化が進んでおり,各国の会社法を中心とした法制度の理解が求められている。しかしながら,アジア地域の国については,一部の国を除いて会社法ないし会社制度に関する十分な研究がなされていない。本稿では,これまで十分な研究がなされていないフィリピンにおける会社法と改正証券法を取り上げ,その基本構造及びそれらに基づくSEC規制上の株式会社に対する計算書類公開制度について論じた。その結果,制度的にみた場合には,アメリカ法に準拠したフィリピン法上の株式会社に対するSECでの計算書類公開制度は,わが国の制度より実効性があり,特に問題の多いわが国の小規模株式会における計算書類公開制度を検討する上で有意義なものであることを指摘することができた。
著者
木原 高治
出版者
東京農業大学
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.68-92, 2011 (Released:2012-12-06)

本稿では,地域社会における地方企業の役割や存立意義を明らかにするために,清酒製造業4社による地域活性化のための具体的な取り組みについて分析を行った。同族企業が多い地方企業の場合,その特徴として,有機的組織の積極面を生かした従業員志向の経営,顧客満足を目指した技術,販売,組織面でのイノベイティブな取り組みに見られる消費者志向の経営,株主への配慮を必要としない長期的な経営志向と地域社会への積極的な貢献意欲などをあげることができる。地方企業は地域社会との共生を基盤として共存共栄をしているが,そのガバナンスの基礎は地域社会を基礎とした多様な信頼関係に求めることができる。また,地方企業の諸活動は,地域社会の人々の生活実体を財やサービスの供給,雇用の受け入れ,地域貢献活動等の多様な側面から支えており,逆に地方企業は地域社会に存在している様々な資源や人間関係により支えられている。その相互のコミュニケーションを支える信頼関係の構築こそが,地域社会における地方企業の役割や存立意義につながるものである。
著者
木原 高治
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.205-210, 2010-09

フィリピン会社法は,母法アメリカ会社法と同様に会社の権利能力範囲内の行為として慈善,学術,教育等への寄付を認める一方で,母法と異なり政治献金は会社の能力外の行為として禁止している。一般に,会社の政治献金は公法により制限されており,フィリピンのように会社法により政治献金を直接規制する例は他になく,わが国の会社法研究上において示唆に富むものであると言える。The Corporation Code of the Philippines provides that corporations may make reasonable donations for public welfare, charitable, cultural, scientific, civic or similar purposes in the provision of Corporation Laws of the US. However, it also provides that corporations shall not give donations to any political party or candidate for the purpose of partisan political activity. This provision has originality and it is very significant to rethink the legal problems of political donations by business corporations in Japan. This paper shows the content and meaning of the provision and necessity to adopt such a provision into the Company Law of Japan.