著者
木場 安莉沙
出版者
カルチュラル・スタディーズ学会
雑誌
年報カルチュラル・スタディーズ (ISSN:21879222)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.117-142, 2019 (Released:2019-10-21)
参考文献数
29

本研究は言語的/パラ言語的情報をマルチモーダルに分析し、哲学的知見と言語学的知見の交錯するところに位置づけられるものである。本研究ではメディアに見られる性的少数者の表象を対象とし、バトラーやフーコーの知見を援用しつつディスコース分析の手法を用いて、セクシュアリティの表象に見られる特徴や、表象と関連して動的に産出されるパワーおよびイデオロギーについて考察する。データとして子供向けアニメ映画やバラエティ番組を扱い、そうしたフィクションおよびノンフィクションにおける表象の間に関連性が見られるかどうか、また表象に働きかける「イデオロギーの戦略」や「攪乱」の可能性について明らかにすることが本研究の目的である。分析の結果から、ノン/フィクション間には表象上の類似点が見られるものの両者ともに新しいキャラクラーの登場によって表象の揺れが見られること、このことが攪乱の現れであるとともにその契機となること、さらに、一貫して変わらないように見える表象も異なる(そして多層的な)イデオロギーの戦略から産出されていることが明らかとなった。