著者
伊藤 聖子 木川 梨沙 新井 映子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.254-261, 2013 (Released:2013-10-18)
参考文献数
27
被引用文献数
8

澱粉を主成分とするジャガイモ,サツマイモ,サトイモ及びナガイモは,米粉パンの米粉と容易に置換が可能である。本研究では,これらイモ類の粉末置換が米粉パンの老化に及ぼす影響について検討した。サツマイモ,サトイモ及びナガイモ粉末で置換した米粉パンの比容積は,いずれもコントロール(100%米粉)と差は認められなかった。しかし,ジャガイモ粉末は置換率の増加とともにパンの比容積が顕著に減少した。サツマイモ粉末で置換した場合,焼成3日後のクラムの硬さは,コントロールと比較して顕著にやわらかいことが明らかとなった。サツマイモ粉末中には耐熱性のβ-アミラーゼが含まれ,パンの焼成中に米澱粉を分解し,大量のマルトースを生成することが示された。また,サツマイモ粉末で置換したパンのクラムには,マルトースが顕著に検出された。これより,サツマイモ粉末中のβ-アミラーゼによって生成したマルトースが澱粉の再結晶を阻害し,米粉パンの老化を抑制したと考えられた。