著者
白山 竜次 木戸 君枝 桐原 弘
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.417-422, 2019 (Released:2019-12-31)
参考文献数
15

同一消費電力のLED光源におけるR光チップとFR光チップの割合(R/FR比)と花芽分化抑制効果の関係を,電照による花成抑制が容易でない夏秋ギク品種‘岩の白扇’と容易な秋ギク品種‘神馬’の2品種を用いて検討した.試験は,波長632 nmのR光LEDチップおよび波長730 nmのFR光チップをそれぞれ5 : 0,4 : 1,3 : 2,2 : 3,1 : 4,0 : 5として,合計5チップになるように製作された6種類のLED電球を供試し,品種ごとにそれぞれ異なる長時間および短時間電照区を設置した.‘岩の白扇’では長時間電照区を4時間電照,短時間電照区を30分電照,‘神馬’では長時間電照区を2時間電照,短時間電照区を4分電照として,光質の違いによる花成抑制の効果の違いが検出しやすいようにした.長時間電照では,品種で光質に対する反応が異なり,‘岩の白扇’はR3:FR2,R2:FR3区で花成抑制効果が高かったが,‘神馬’は,R5:FR0区で高い花成抑制効果が得られた.短時間電照では両品種ともにR5:FR0で高い花成抑制効果が得られた.‘岩の白扇’はR + FR光による長時間の電照で高い花成抑制効果が得られたことから,フィトクロムの分子種の1つであるphyAを介した高照射反応(HIR)の関与が示唆された.
著者
白山 竜次 木戸 君枝
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.281-288, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
22

明期終了時の遠赤色光(EOD-FR)照射がキクの花成に及ぼす影響について調査した.秋ギク‘神馬’の低温期におけるEOD-FR処理は花成を促進した.秋ギクの自然日長における10月開花作型栽培によるEOD-FR処理は,20品種のうち14品種において花芽分化の促進効果が得られた.短日条件下に定植した秋ギクのEOD-FR処理は,20品種のうち11品種において花芽分化の促進効果が得られた.夏秋ギク6月開花作型でのEOD-FR処理では,30品種系統のうち19品種において開花の促進効果が得られた.EOD-FR照射は,秋ギク‘神馬’の限界暗期付近の花芽分化を促進したが,‘神馬’の明期終了から最も暗期中断の効果が高くなる時間までの経過時間(Dusk-NBmax)には影響しなかった.本研究は,EOD-FR処理がキク節間伸長を促進すると同様に栽培条件によっては花成促進に働くことを示した.
著者
白山 竜次 郡山 啓作 木戸 君枝
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.71-78, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2

キクの暗期中断における間欠照明の花芽分化抑制に対する有効性を赤色光(以下R光と略す)および赤色光 + 遠赤色光(以下R + FR光と略す)を用いて検証した.同一照射時間帯(22:00~2:00) で連続照明と間欠照明を比較したところ,R光およびR + FR光ともにDuty比が低下するにつれて花芽分化抑制効果が低下した.またR光の連続照明とDuty比0.5で積算の放射照度を連続照明に対して1.0および0.5に設定した間欠照明の効果を比較したところ,1.0区は連続照明と同等であったが,0.5区は連続照明に比較して効果が劣った.このことから,本実験ではキクの同一時間帯での連続照明に対する間欠照明の優位性は確認できなかった.次に,同一積算照射時間において短時間の連続光(18分) と間欠により3時間に照射時間帯を拡張した間欠照明を比較した場合では,R光は間欠照明の効果が認められなかったが,R + FR光では連続照明に比較して間欠照明の花芽分化抑制効果が高くなった.これは短時間照明(18分) の場合,R + FR光の連続照明は,R + FR光によるフィトクロムの低Pfrレベルにより,暗期中断の効果が低下することによると考えられた.また,連続照明の時間帯を変えることで暗期中断の効果が変化したことから,同一積算照射時間の場合は,キクの暗期中断に対する感度が時間帯で変化することに注意する必要があると考えられた.実際のキク電照栽培では,暗期中断の時間がR + FR光での低Pfrによる花芽分化抑制効果の低下が発現する時間よりも比較的長時間であるために,間欠電照の優位性はほとんどないと考えられた.