著者
白山 竜次 郡山 啓作
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.357-363, 2014
被引用文献数
6

夏秋ギク5品種および秋ギク5品種を用いて,それぞれの品種の限界日長と効果の高い暗期中断時間帯の関係について調査した.夏秋ギク'フローラル優香','岩の白扇','サザングレープ','サザンチェルシー'および'サザンペガサス'の8月開花における限界日長(暗期長)は,15(9)~16(8)時間で,暗期開始(Dusk)から花芽分化抑制効果の高い時間(NBmax)までの時間(Dusk-NBmax)は,電照時間1時間を加えると6.5~8.5時間であった.一方,秋ギク'神馬','山陽黄金','雪姫','白粋'および'秀芳の力'の12月開花における限界日長(暗期長)は,5品種ともに13(11)時間で,秋ギク5品種のDusk-NBmaxは,電照時間40分を加えると概ね9~10.5時間であった.秋ギクに比較して限界暗期長の短い夏秋ギクはDusk-NBmaxも秋ギクに比較して短かった.これらの結果は,各品種のDusk-NBmaxはそれぞれの限界暗期の長さと連動しており,限界暗期長付近の暗期中断が最も花芽分化に影響を及ぼしていることを示し,個々の品種の限界日長が確認できれば,効果の高い電照時間帯を推定できる可能性を示唆する.
著者
白山 竜次 木戸 君枝 桐原 弘
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.417-422, 2019 (Released:2019-12-31)
参考文献数
15

同一消費電力のLED光源におけるR光チップとFR光チップの割合(R/FR比)と花芽分化抑制効果の関係を,電照による花成抑制が容易でない夏秋ギク品種‘岩の白扇’と容易な秋ギク品種‘神馬’の2品種を用いて検討した.試験は,波長632 nmのR光LEDチップおよび波長730 nmのFR光チップをそれぞれ5 : 0,4 : 1,3 : 2,2 : 3,1 : 4,0 : 5として,合計5チップになるように製作された6種類のLED電球を供試し,品種ごとにそれぞれ異なる長時間および短時間電照区を設置した.‘岩の白扇’では長時間電照区を4時間電照,短時間電照区を30分電照,‘神馬’では長時間電照区を2時間電照,短時間電照区を4分電照として,光質の違いによる花成抑制の効果の違いが検出しやすいようにした.長時間電照では,品種で光質に対する反応が異なり,‘岩の白扇’はR3:FR2,R2:FR3区で花成抑制効果が高かったが,‘神馬’は,R5:FR0区で高い花成抑制効果が得られた.短時間電照では両品種ともにR5:FR0で高い花成抑制効果が得られた.‘岩の白扇’はR + FR光による長時間の電照で高い花成抑制効果が得られたことから,フィトクロムの分子種の1つであるphyAを介した高照射反応(HIR)の関与が示唆された.
著者
白山 竜次 木戸 君枝
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.281-288, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
22

明期終了時の遠赤色光(EOD-FR)照射がキクの花成に及ぼす影響について調査した.秋ギク‘神馬’の低温期におけるEOD-FR処理は花成を促進した.秋ギクの自然日長における10月開花作型栽培によるEOD-FR処理は,20品種のうち14品種において花芽分化の促進効果が得られた.短日条件下に定植した秋ギクのEOD-FR処理は,20品種のうち11品種において花芽分化の促進効果が得られた.夏秋ギク6月開花作型でのEOD-FR処理では,30品種系統のうち19品種において開花の促進効果が得られた.EOD-FR照射は,秋ギク‘神馬’の限界暗期付近の花芽分化を促進したが,‘神馬’の明期終了から最も暗期中断の効果が高くなる時間までの経過時間(Dusk-NBmax)には影響しなかった.本研究は,EOD-FR処理がキク節間伸長を促進すると同様に栽培条件によっては花成促進に働くことを示した.
著者
白山 竜次 郡山 啓作 木戸 君枝
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.71-78, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2

キクの暗期中断における間欠照明の花芽分化抑制に対する有効性を赤色光(以下R光と略す)および赤色光 + 遠赤色光(以下R + FR光と略す)を用いて検証した.同一照射時間帯(22:00~2:00) で連続照明と間欠照明を比較したところ,R光およびR + FR光ともにDuty比が低下するにつれて花芽分化抑制効果が低下した.またR光の連続照明とDuty比0.5で積算の放射照度を連続照明に対して1.0および0.5に設定した間欠照明の効果を比較したところ,1.0区は連続照明と同等であったが,0.5区は連続照明に比較して効果が劣った.このことから,本実験ではキクの同一時間帯での連続照明に対する間欠照明の優位性は確認できなかった.次に,同一積算照射時間において短時間の連続光(18分) と間欠により3時間に照射時間帯を拡張した間欠照明を比較した場合では,R光は間欠照明の効果が認められなかったが,R + FR光では連続照明に比較して間欠照明の花芽分化抑制効果が高くなった.これは短時間照明(18分) の場合,R + FR光の連続照明は,R + FR光によるフィトクロムの低Pfrレベルにより,暗期中断の効果が低下することによると考えられた.また,連続照明の時間帯を変えることで暗期中断の効果が変化したことから,同一積算照射時間の場合は,キクの暗期中断に対する感度が時間帯で変化することに注意する必要があると考えられた.実際のキク電照栽培では,暗期中断の時間がR + FR光での低Pfrによる花芽分化抑制効果の低下が発現する時間よりも比較的長時間であるために,間欠電照の優位性はほとんどないと考えられた.
著者
今給黎 征郎 白山 竜次 渡辺 剛史 上野 敬一郎 永吉 実孝 久松 完
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.51-59, 2017

<p>近年,量販店向けの花束加工用にニーズが高まっている切り花長70 cm程度のスプレーギクを"エコマム"と称し,"エコマム"を通年安定的に供給するための生産技術を検討した.現場に普及している直挿し栽培を用いて10 a当たり年4作で24万本出荷することを目標とし,1.効率生産に適した品種の条件,2.栽植様式,3.わい化剤処理による切り花重の改善効果について検討を行った.適品種の条件は,秋スプレーギクと一部作型に夏秋スプレーギクを供試して年4作型を行い,1作80日で栽培できる品種を探索した.その結果,伸長性,早生性(到花日数),揃い(生育・開花)が優れている品種が求められ,秋スプレーギクの'セレブレイト','ピサン'が該当した.ただし高温となる9月開花作型では,それらの特性に加え高温開花性が優れる夏秋スプレーギク品種を用いる必要があることがわかった.栽植様式については,慣行より通路を狭くすることで植付面積を広くとり,10 a当たり4万本から6万本まで栽植本数を増やして,切り花重や花数への影響を検討した.その結果,栽植本数を増やすことで切り花重や花数が減少するものの,通路側のマスを2本植え,内側のマスを1本植えにするなど,植付け方法を工夫することにより切り花重の揃いが向上した.わい化剤散布による切り花重の増加効果については,10 a当たり7万本程度の栽植本数で,過去に輪ギクで効果が認められている方法を応用し,電照打ち切り後にわい化剤を2回散布することで,切り花重が有意に増加し,20 g以上の切り花を6万本以上採花できた.これらの技術を利用することで,直挿し栽培による年4作で,慣行の2倍となる年間24万本のスプレーギクを出荷できることが実証された.</p>
著者
今給黎 征郎 白山 竜次 渡辺 剛史 上野 敬一郎 永吉 実孝 久松 完
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.51-59, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
18

近年,量販店向けの花束加工用にニーズが高まっている切り花長70 cm程度のスプレーギクを“エコマム”と称し,“エコマム”を通年安定的に供給するための生産技術を検討した.現場に普及している直挿し栽培を用いて10 a当たり年4作で24万本出荷することを目標とし,1.効率生産に適した品種の条件,2.栽植様式,3.わい化剤処理による切り花重の改善効果について検討を行った.適品種の条件は,秋スプレーギクと一部作型に夏秋スプレーギクを供試して年4作型を行い,1作80日で栽培できる品種を探索した.その結果,伸長性,早生性(到花日数),揃い(生育・開花)が優れている品種が求められ,秋スプレーギクの‘セレブレイト’,‘ピサン’が該当した.ただし高温となる9月開花作型では,それらの特性に加え高温開花性が優れる夏秋スプレーギク品種を用いる必要があることがわかった.栽植様式については,慣行より通路を狭くすることで植付面積を広くとり,10 a当たり4万本から6万本まで栽植本数を増やして,切り花重や花数への影響を検討した.その結果,栽植本数を増やすことで切り花重や花数が減少するものの,通路側のマスを2本植え,内側のマスを1本植えにするなど,植付け方法を工夫することにより切り花重の揃いが向上した.わい化剤散布による切り花重の増加効果については,10 a当たり7万本程度の栽植本数で,過去に輪ギクで効果が認められている方法を応用し,電照打ち切り後にわい化剤を2回散布することで,切り花重が有意に増加し,20 g以上の切り花を6万本以上採花できた.これらの技術を利用することで,直挿し栽培による年4作で,慣行の2倍となる年間24万本のスプレーギクを出荷できることが実証された.
著者
白山 竜次 郡山 啓作
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.427-432, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
15
被引用文献数
7

キク電照栽培における効果的な電照技術を確立するために,電照時間帯が花芽分化抑制効果に及ぼす影響を,限界日長の異なる夏秋ギクおよび秋ギクを用いて調査した.夏秋ギク‘岩の白扇’を用いて電照時間帯と花芽分化抑制効果を調べた結果,電照の効果が高い時間帯は暗期の中心ではなく,後夜半であった.そこでシェードを用いて‘岩の白扇’の暗期開始時刻を早めたところ,電照効果の高い時間帯が早くなった.次に秋ギク‘神馬’を用いて,暗期の中心を0:00に固定した日長12,10および8時間の3区で電照効果の高い時間帯を検討したところ,日長の長い区ほど電照効果の高い時間帯が後夜半にずれる傾向が認められた.このことから,電照効果の高い時間帯は暗期開始からの経過時間と関係があり,‘神馬’の場合は,暗期開始から9~10時後が電照効果の高い時間帯であると考えられる.また‘岩の白扇’と‘神馬’の電照効果の高い時間帯を比較した結果,‘岩の白扇’は,暗期開始から電照効果の高い時間帯までの時間が短い傾向にあり,品種ごとの限界日長との関連性が示唆された.