- 著者
-
木村 久仁子
岩野 正之
- 出版者
- 日本臨床免疫学会
- 雑誌
- 日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.3, pp.160-167, 2009 (Released:2009-06-30)
- 参考文献数
- 55
- 被引用文献数
-
4
8
組織線維化は臓器不全に共通の病態である.したがって,線維化の機序を解明することは,臓器不全の進展予防や治療法の開発に重要である.線維芽細胞は線維化において中心的役割を果たす細胞であるが,その起源としてepithelial-mesenchymal transition (EMT),末梢血前駆細胞・骨髄細胞由来,endothelial-mesenchymal transison (EndMT)などが報告されている.細胞を取り巻く微小環境において,低酸素は線維化を誘導する重要な因子である.われわれは,低酸素刺激がhypoxia-inducible factor-1α(HIF-1α)を介して尿細管上皮細胞にEMTを誘導することを報告した.さらに,尿細管上皮細胞で特異的にHIF-1αを欠損あるいは安定発現させた遺伝子改変マウスを用いて,HIF-1αが腎間質線維化を促進させることを証明した.現在,シグナル伝達系を含む多くの線維化関連分子が同定され,これらをターゲットとした治療法の開発が進められている.EMT抑制因子,TGF-βシグナル修飾薬,およびHIF-1α活性阻害薬は線維化の新たな治療薬として期待される.