著者
小畑 伸一郎 木村 圭志 前田 和弘 真田 功 佐藤 昌彦 松村 克己 河野 文夫 東 輝一朗 紫藤 忠博
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.174-176, 1991-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
12

40歳男性, 粘血便, 下痢を主訴とし注腸, 大腸内視鏡, 生検所見より左半結腸型の潰瘍性大腸炎と診断された. プレドニゾロン30mg/日及び, salicylazosulfa pyridine4.0g/日の約1年にわたる投与でも, 緩解に導入できず症状持続. 当科入院後経管栄養を併用により一時的に緩解となるも3ヵ月後粘血便出現, 大腸内視鏡, 組織学上活動性であった. プレドニゾロン60mg/日に増量し, 柴苓湯を併用した. 症状は消失し, プレドニゾロン減量が可能となり, 10週後には外来通院となり, プレドニゾロン中止するも緩解を保っている. 柴苓湯にはステロイド効果の増強作用が知られており, ステロイド減量に成功し良好な経過を得た.
著者
木村 圭志
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

コンデンジジは、SMC2/SMC4の二つのSMC ATPaseサブユニットと三つのnon-SMCサブユニットからなるタンパク質複合体で、M期の染色体凝縮に必須の因子である。最近になって、修復、チェックポイントの活性化、転写制御などの間期におけるDNA代謝にもこの酵素が関与することが報告されている。コンデンシンは、in vitroでATP依存的にDNAに正のスーパーコイルを導入する活性(スーパーコイリング活性)を持つ。我々は、コンデンシンの細胞周期における制御機構を解析した。コンデンシンのタンパク量、及びタンパク質の安定性は細胞周期を通じて一定だった。細胞周期におけるリン酸化を調べたところ、コンデンシンは間期においてCK2で、M期ではCdc2でリン酸化されていた。M期でのリン化がコンデンシンのスーパーコイリング活性を促進するのに対して、CK2による間期リン酸化は著しく抑制した。このCK2による抑制的なリン酸化レベルの細胞周期における変動を調べたところ、M期に染色体上で著しく低下していた。さらに、ツメガエルのM期卵抽出液中で、コンデンシンのCK2部位のリン酸化レベルを上昇させると、染色体の凝縮は阻害された。これらの結果から、コンデンシンの機能は、従来から考えられていたM期キナーゼCdc2だけでなく、CK2によっても制御されていることが示唆された。一方、精製したコンデンシンをin vitro転写系に加えると、転写レベルは抑制された。また、その抑制はCK2によるコンデンシンのリン酸化により解除された。これらの結果から、コンデンシンは、間期においてもクロマチン構造をコンパクトな構造に転換するのに寄与し、CK2リン酸化によるコンデンシン活性の抑制は、クロマチン構造の弛緩と、その結果としての転写活性化に関与している可能性が示唆された。