著者
木村 幸太 松谷 信也 長野 浩子
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.47, 2005

【はじめに】作業療法は「その人らしい生活の再構築」の援助を行う。歴史をみると「医の倫理」から、1960年代に入り、障害者側が主体である「生命倫理」が強く叫ばれるようになった。このような歴史的背景の中で作業療法では、「クライエント中心」という考え方は重要であり、その人らしさを知ることが必要と考える。今回健常人を対象とし、生活をセルフケア・仕事・レジャーの3つに大別し、各人における生活(作業)の違い、障害を持ったときの生活の意味の違いについてアンケート調査する機会を得たので報告する。【対象】当院リハビリ部、22から52歳の男女職員、65/97名【方法】1.一日の生活リズム2.セルフケア・仕事・レジャーの意味3.障害後(仮定)でのセルフケア・仕事・レジャーの意味4.平日と休日の作業(セルフケア)の意味の較差、について自由記述方式でのアンケートを実施。【結果及び考察】1.平日では一日の大半を仕事又はセルフケアに費やし、休日ではレジャーが大半を占めていた。2.セルフケア・仕事・レジャーに個々で意味の違いが認められた。意味のばらつきは個人の作業に対する価値感の違いであり、作業の意味を統一することは困難と考える。3.障害前のセルフケアでは「おしゃれ」「リフレッシュ」などの楽しみ的な意味が含まれていたが、障害後は楽しみといった返答は減少し、生理的欲求の意味が強い。障害前の仕事は「生活のため」が51%、障害後は「やりがい」が61%を占めた。障害前のレジャーは「気分転換」が84%、障害後は「気分転換」62%、「生きがい」が27%と変化した。まとめて考えると「セルフケア」が生きるための生理的欲求としてより強くなり、役割的であった「仕事」が、できなくなることにより「レジャー」と同様に「生きがい」として意味が変化したと考えられる。4.平日と休日の差では、平日に生理的欲求、社会生活上で求められる最低限のマナーとしての意味合いが強いのに対し、休日は楽しみ的要素や個人の価値観に基づいた意味が強い。これは、休日には買い物に行く、遊びに行くなどにより「おしゃれをしたい」「周りからよく見られたい」「おいしいものを食べたい」といったセルフケアを楽しむことや、リフレッシュするなどの意味が強くなったためと考えられる。【まとめ】今回の調査により、個人での作業の意味には差があること、平日と休日では同じ作業でも意味に差があること、障害を受けることで作業の意味が変化することが分かった。カナダ作業遂行モデルの中でも、『作業遂行は、本人の経験に基づいて各個人によって定義されるものである。』とあり、今回の調査結果と一致する点があった。このように「クライエント中心」の視点では各個人の作業の意味を理解し、適する作業を探していくことが重要である。今後は今回の結果をもとにさらに幅広く、様々な作業の「意味」について考えたい。