著者
木村 幸恵
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.269, 2008

幼児が主体的に吸入に臨むための工夫人形を用いたプレパレーションを導入して木村幸恵・上岡めぐみ・吉宮倫子・川平民子〈緒言〉当病棟では喘息、肺炎などで吸入療法を必要とする患児が入院することが多い。しかし吸入を嫌がり、怖がって逃げようとする患児が多くみられる。保護者には吸入の方法・効果を説明していたが、患児には具体的に説明していなかったので吸入を怖がっていたのではないかと考えた。プレパレ-ションにより患児がこれから行う処置をその子なりに理解し、主体的に臨む行動がみられたとの報告があった。幼児には言語的説明で行うことより、年齢や発達段階に応じて視覚的、或いは体験を通したプレパレ-ションが有効であるといわれている。そこで当病棟でも幼児を対象とし、人形を用いた吸入のプレパレ-ションを行い、その子なりに吸入という治療を理解し、主体的に吸入に取り組めるよう援助しようと考えた。プレパレ-ションを行い、患児の吸入への取り組みを観察し、プレパレーションの効果を検証したので報告する。〈方法〉入院中の吸入療法を必要とする3~6歳の患児を対象に実施。プレパレーション実施方法1)場所:病室 2)ツール:ばい菌シール付きキワニスドール(キワニスドールはプレパレーション前に患児に自由に絵を描いてもらう)3)実施時期:入院して2回目の吸入時 4)実施時間:6分 5)プレパレーション実施にあたり、説明手順を作成し、実施中の言葉、時間を統一するようメンバーで練習を10回行った。プレパレーション実施前(付き添う親に吸入方法を説明し患児には説明していない)と実施中と実施後の患児の吸入への取り組みを独自の指標のチェックリストを用いて観察し、その行動を分析する。〈結果〉1.対象の属性A:3歳10ヶ月 男児吸入暦ありB:3歳 男児吸入暦ありC:3歳11ヶ月 女児吸入暦なしD:4歳4ヶ月 男児吸入暦なし2.疾患:肺炎2名、気管支喘息2名Cは1回目の吸入時、嫌がり泣いていたが、プレパレーション後実施できた。また、プレパレーション後、吸入の必要性を全員に質問したところその子なりの理解した言葉が聞かれ、必要性を理解できていた。B、Cは人形にも吸入を行い人形に「コンコンなくなるけえね。」「早く帰ろうね。」などと話しかけていた。プレパレーション後、全員嫌がることなく吸入を実施することができ、自分から吸入の電源を入れたり、吸入器を持ったり、「吸入する。」との言葉が聞かれ主体的に実施できた。人形を用いたごっこ遊びのプレパレーションを行い、患児は吸入を遊び感覚で日常的なものととらえることができた。遊び感覚で吸入を行い、主体的に取り組むことができた。またB、Cはプレパレーション後も、人形を使用しばい菌を剥がし「バイバイキーン!」と言って遊んだり、人形に吸入をしたりして何回も遊んでいた。Dもばい菌シールをつけたり剥いだりして遊んでいた。吸入後も、人形を用いて繰り返しごっこ遊びをすることで理解を深めていくことができた。