- 著者
-
木村 敏久
小泉 令三
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.2, pp.185-201, 2020-06-30 (Released:2020-11-03)
- 参考文献数
- 31
- 被引用文献数
-
6
本研究では,いじめ抑止に関する中村・越川(2014)の改善をめざして,社会性と情動の学習における問題解決スキルの習得を目標に2時間の心理教育プログラム(①いじめ対応策の検討,②対応策実行のためのロールプレイング)の授業を実施した。心理臨床の専門家ではなく通常の授業と同様に教師が実施した。中学2年生151名が本研究に参加し,実施時期をずらすウェイティング・リスト法を用いて,前期実施群と後期実施群を設定し,統制条件との比較による効果測定を行った。その結果,観衆や傍観者の立場での学習については,未学習の生徒との比較の結果,先行研究と同様にいじめの停止行動に対する自己効力感が学習後に上昇しており,かつ今回,一定期間(9日間),効果の維持が確認できた。一方,加害を容認するような傾向としては,学習後に一旦いじめ加害傾向が減少し,いじめ否定規範は上昇するものの,効果が継続しない傾向が新たに示された。また,社会的能力が高いと全般的にいじめ抑止傾向は高いことが明らかになった。以上の成果から,教師による指導の効果を確認するとともに,いじめ抑止の方策を教育実践上の観点から考察した。