著者
相川 佳子 松田 聡 川上 和彦 中井 勝彦 木村 浩三 野中 雅彦 尾田 典隆 新井 賢一郎 松永 篤志 今村 茂樹
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.53-57, 2019 (Released:2019-01-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1

保存的治療で改善をしない慢性裂肛患者への局所用カルシウムチャンネルブロッカー軟膏(以下ニフェジピン軟膏)の有効性と安全性に対する検証的臨床研究を行った.慢性裂肛患者40例に対してニフェジピン軟膏を使用し,疼痛(Face Scale;以下FS)と肛門内圧(以下MRP)を評価した.評価対象は32例であった.疼痛FSは,排便時・安静時共に治療前後で有意に低下した.手術に移行した症例を無効群,それ以外を有効群とすると,その有効率は87.5%であった.無効群のMRPは有効群に比べ有意に高かったが,治療前後でのMRPの有意な低下は認めなかった.副作用は1例に頭痛を認めた.ニフェジピン軟膏の機序として,肛門局所の平滑筋を弛緩させ,MRPを低下させ,創治癒を促進すると考えてきた.しかし,本研究で疼痛の有意な改善を認めたが,MRPは低下しなかったことから,MRP以外に疼痛を改善する要素がある可能性が示唆された.
著者
木村 浩三
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B3O1088, 2010 (Released:2010-05-25)

【はじめに】 脊髄小脳変性症(SCD)の理学療法として、弾性包帯や重錘負荷による方法がある。しかし、これらの方法は代償的要素が強く小脳の賦活は低い。そこで、脳科学の研究結果を読み解き小脳の賦活が認められる身体活動・脳活動から新しく理学療法(Physiotherapy Based on Brain Sciences:PTBBS)を創造した。PTBBSを症例に試行し良好な効果が得られた。【目的】 脳科学の研究結果において、小脳が賦活する多くの身体活動・脳活動の中からPTBBSの運動課題として1)感覚識別課題、2)選択的注意による課題、3)時間的要素を含む課題、4)空間的要素を含む課題を重点に創造し、試行したPTBBSの一部を紹介する。【方法】 SCDの症例に、PTBBSを試行し、試行前後で理学療法評価を行った。評価内容は、運動失調症のテスト(鼻指鼻・鼻指・膝打ち・手回内回外・足趾手指・踵膝・向こう脛叩打試験)・坐位バランス(エアスタビライザー上で坐位保持、同上で坐位保持での足踏み)・立位バランス(平地・前傾斜面・後傾斜面・側方斜面での立位保持)とした。また歩行実態も確認した。PTBBSの実際は、認知神経リハビリテーションの技法を変用し独自に創造した。【説明と同意】 症例本人へPTBBSの試行について説明し同意を得て本研究を行った。また、大分県立病院リハビリテーション科の臨床研究に関する倫理審査で承認を受けた。【症例と経過】 患者は70歳代女性。診断名はSCD。現病歴は3年前よりめまい出現、最近ふらつきが悪化し、転倒傾向が強くなった。平成21年7月15日に当院入院となる。初期評価は平成21年7月28日。PTBBS開始は同年7月31日、最終評価は同年8月25日に行った。【理学療法の実際】 小脳が賦活する身体活動・脳活動の中からPTBBSの運動課題として、1)感覚識別課題は、下肢へ圧覚(スポンジ)、触覚(コイン)、位置覚(傾斜板)重量覚(体重計上で左右均等)などの課題を、2)選択的注意による課題は、上肢や下肢での形や線を擦る運動、下肢で順序運動、歩行では点踏み歩行を、3)時間的要素を含む課題は、上肢や下肢でリズム運動を、4)空間的要素を含む課題として上肢での積み木、ドミノ、ブロックパズルなどを試行した。【結果】 運動失調症のテストでは、鼻指鼻・鼻指・膝打ち・手回内・回外、足趾手指試験、踵膝は陽性から陰性に、向こう脛叩打試験で左下肢は陽性で変化なかった。座位バランスでは、エアスタビライザー上での坐位保持での動揺が軽度から消失へ、同上での坐位保持で足踏みの動揺が、前後方向で重度から消失へ、左右方向で重度から軽度へ改善した。立位バランスでの動揺は、平地で軽度から消失へ、前傾斜面で軽度から消失へ、後傾斜面で転倒から軽度へ、側方斜面で軽度から消失へ改善した。歩行は歩行器介助歩行から杖監視歩行になった。【考察】 小脳は、繊細な運動・非常に複雑な運動・新しく経験する運動・順序が決められた運動などで賦活する。小脳を賦活させるには、感覚情報(視覚・聴覚・体性感覚)を使用した身体活動・脳活動の中で、感覚情報と身体運動をいかに時間的・空間的に同調させ、規則的な運動課題を行わせるかが重要である。脊髄小脳変性症の改善にPTBBSが小脳機能の改善に効果を示す可能性は高い。【理学療法学研究としての意義】 新しい理学療法の創造