著者
木澤 遼 濱 侃 吉田 圭一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.12-22, 2022 (Released:2022-03-24)
参考文献数
41

本研究では,北海道北部の利尻岳における森林限界の変化を検討するため,過去の空中写真と小型無人航空機(UAV)の画像を用いて,森林限界付近の40年間の植生変化を明らかにした.空中写真による土地被覆分類の結果,利尻岳西向き斜面では森林の占める割合が増加すると同時に,高標高側へ拡大していた.ロジスティック回帰分析より森林限界は40年間で41.9 m高標高側へ移動しており,その上昇速度は1.0 m yr-1であった.空中写真およびUAV画像による植生判読から,森林限界付近ではダケカンバ林における林冠木の密度の増加に加え,新たなダケカンバ林分の成立がみられた.新規のダケカンバ林分は高標高側のササ草原やハイマツ群落を置換しており,このことにより,利尻岳西向き斜面において森林限界が上昇したことがわかった.