著者
中谷 哲郎 桑原 明 井上 京市 木田 芳隆
出版者
日本家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.304-310, 1985
被引用文献数
2

甲状腺機能の変動がおもにニワトリヒナの血液アスコルビン酸(AsA)濃度におよぼす影響について検討した。白色レグホーン種およびブロイラー専用種ヒナを用い,甲状腺機能促進剤としてヨードカゼイン(IC),また,甲状腺機能抑制剤としてチオウラシル(TU)をそれぞれ添加した飼料を3週間給与して,甲状腺重量と血液AsA濃度の関係について調べた。また,あわせて増体量,飼料摂取量および飼料効率,副腎および肝臓重量を測定した。<br>1.白色レグホーン種雄ヒナを用い,それぞれ2段階のIC(0.01%,0.03%)およびTU(0.02%,0.06%)添加の影響について調べた実験1において,IC添加による甲状腺重量の有意な減少,一方,TU添加による増体量の有意な減少,甲状腺重量の有意な増加および血液AsA濃度の有意な低下が認められ,これらの変動はIC中谷ほか:甲状腺機能と血液アスコルビン酸 309およびTUの添加量の多い方がより顕著であった。<br>2.ブロイラー専用種雄ヒナを用い,4段階のIC0.003%~0.012%)添加の影響について調べた実験2において,甲状腺重量についてのみ0.006%以上のIC添加で有意な変動が認められ,その重量はIC添加量の増加に反比例して段階的に減少した。また,この場合に血液AsA濃度はやや高くなる傾向を示した。この甲状腺重量と血液AsA濃度との間には有意な負の相関関係のあることが認められた。<br>3.ブロイラー専用種雄ヒナを用い,4段階のTU(0.005%~0.02%)添加の影響について調べた実験3において,甲状腺重量)よび血液AsA濃度について有意な変動が認められた。0.01%以上のTU添加で,添加量の増加に比例して,前者は段階的に増加し,後者は逆に段階的に低下した。また,この甲状腺重量と血液AsA濃度との間には有意な負の相関関係のあることが認められた。<br>4.以上の結果から,ニワトリヒナにおいて,甲状腺機能の変動にともなう甲状腺重量と血液AsA濃度との間には関連があり,甲状腺機能の抑制により血液AsA濃度は顕著に低下するが,甲状腺機能の促進によるその変動はわずかであることがわかった。このことは,ニワトリヒナにおいて,甲状腺機能の抑制がAsAの体内代謝にとくに密接な関係をもつことを示唆するものである。