著者
濟渡 久美 長谷川 莉子 桑原 明 石川 伸一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.67-78, 2022 (Released:2022-03-04)
参考文献数
30
被引用文献数
1

豆乳および牛乳を用いて, 各種増粘剤 (ゼラチン, キサンタンガム, ɩ-カラギーナン) 添加によるエスプーマの起泡安定性を中心とした物理的特性, および若年層, 高年層による官能特性を検討した. 起泡性は, 豆乳N2Oエスプーマおよび牛乳N2Oエスプーマともに増粘剤添加濃度が高いほど起泡性が低下する傾向がみられた. 泡沫の安定性は, 豆乳N2Oエスプーマおよび牛乳N2Oエスプーマともに増粘剤添加濃度が高いほど増加した. 食材によって, 安定性の向上に適した増粘剤の種類や濃度が異なることが示唆された. 嚥下調整食コード2の食品物性を示したエスプーマは, 2.0%ゼラチン添加牛乳N2Oエスプーマ, 0.2%ɩ-カラギーナン添加豆乳N2Oエスプーマであった. 若年層, 高年層による官能評価の結果豆乳N2Oエスプーマは有意に飲み込みやすいと識別され, 豆乳CO2エスプーマは苦いと識別された. 0.2%ɩ-カラギーナン添加豆乳N2Oエスプーマは若年層において, 最もべたつきやすいと識別された. 増粘剤を添加した豆乳および牛乳エスプーマは, 嚥下調整食の新しい調製方法として期待される.
著者
桑原 明大 松葉 成生 井上 幹生 畑 啓生
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.91-103, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
49

愛媛県松山平野には、イシガイ、マツカサガイ、ヌマガイ及びタガイの4種のイシガイ科貝類が生息しており、愛媛県のレッドリストでイシガイとマツカサガイはそれぞれ絶滅危惧I類とII類に、ヌマガイとタガイは準絶滅危惧に指定され、減少が危惧されている。これらの二枚貝は絶滅危惧IA類であるヤリタナゴの産卵床でもあり、その保全が重要である。本研究では、松山平野の小河川と湧水池において、イシガイ類の分布と生息環境の調査を行い、過去の分布との比較を行った。また、マツカサガイの殻長のサイズ分布、雌成貝によるグロキディウム幼生の保育、幼生の宿主魚への寄生の有無を調べた。マツカサガイは小河川の流程およそ3.3 km内の15地点で確認され、その生息密度は最大で2.7個体/m2であった。イシガイは小河川の2地点のみで、最大生息密度0.05個体/m2でみられ、ヌマガイとタガイを合わせたドブガイ類も1地点のみ、生息密度0.02個体/m2で確認された。いずれのイシガイ類も、1988-1991年の調査時には国近川水系に広く分布し、最大生息密度は、マツカサガイで58個体/m2、イシガイで92個体/m2、ドブガイ類で5個体/m2であり、この25年間に生息域と個体群サイズを縮小させていた。また、マツカサガイの在不在に関与する要因を予測した分類木分析の結果、マツカサガイの分布は河口に最も近い堰堤の下流側に制限され、砂泥に占める砂割合が38.8%より大きい場所で多く見られるという結果が得られた。このことから、堰堤が宿主魚の遡上を制限することによりマツカサガイの上流への分散が阻害されていること、マツカサガイは砂を多く含む砂泥を選好していることが示唆された。また、殻長51.5 mm未満の若齢個体にあたるマツカサガイは全く見つからなかった。一方、雌成貝は4-8月にかけ最大87.5%の個体が幼生保育しており、5-9月にかけ、グロキディウム幼生が主にシマヨシノボリに多く寄生していることが確認された。したがって、このマツカサガイ個体群では再生産がおよそ10年間にわたって阻害されており、その阻害要因は稚貝の定着、または生存にあることが示唆された。以上のことから、松山平野では、イシガイ個体群は絶滅寸前であり、マツカサガイ個体群もこのまま新規加入が生じなければ急速に絶滅に向かう恐れがあることがわかり、これらの保全が急務であることが示された。
著者
桑原 明史 須田 武保 飯合 恒夫 畠山 勝義
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.21-26, 2009 (Released:2009-01-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

新潟県における大腸内視鏡検査関連の偶発症の実態を明らかにするため,アンケート調査を用いた検討を行った.対象は2000∼2004年に新潟大腸肛門病研究会の13幹事施設で行われた大腸内視鏡検査症例である.検査総数は,85,507件(観察のみ40,149件: 処置あり45,358件)であった.偶発症の発生頻度は,全体で198件,0.23%に認められ,処置あり群で8倍高くなっていた(観察のみ0.05%,処置あり群0.39%).偶発症の内訳は出血80.3%と穿孔13.6%が多く,発生頻度は出血0.19%,穿孔0.03%であった.出血の原因手技はEMRが76.7%で,治療はクリッピングが66%に行われていた.穿孔例の部位は96.3%が左側結腸であり,59.3%が観察行為のみで起きていた.穿孔に対する処置は85.2%で緊急手術が施行されていた.偶発症での死亡例は0.002%であり,いずれも穿孔例であった.
著者
桑原 明栄子 牧野 光則
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.108-119, 2005 (Released:2008-07-30)
参考文献数
8

年々増加するディジタルデータの理解と把握を深める手段として,コンピュータグラフィックスによる情報可視化技術は重要性を増している.著者らは階層構造データを対象として,各要素がもつ属性により表示形態や配置順序を決定する3次元一括可視化手法・システムを研究している.これまでに情報をアイコンで表し,入れ子形式で,円領域内に配置する手法「円形都市」を提案している.この手法は,属性の表現,ならびに,属性を利用した順序の入れ替えに対し,ユーザの理解を妨げずに表現できる.また,データの構造だけでなく,同時に表現可能な属性量が多い.一方で,平面上に全データを一面展開するため,提示情報の視認性が一部十分ではなく改善の必要がある.本稿では,これを拡張し,情報を螺旋状に配置し,枠で表現していた同一グループを台座で表し,アイコンサイズの高さを統一することで,各アイコン,台座の遮蔽を軽減する.そのことにより,仮想3次元空間のより有効な利用とユーザのより容易な理解をはかる.さらに,階層構造に限らず,属性情報を持つ要素で構成されているデータにも適用し,システムの汎用性を向上する.
著者
桑原 明栄 牧野 光則
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.21-30, 2003 (Released:2008-07-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

コンピュータグラフィックス(CG) 技術の近年の発展により,3 次元(3D)CG アニメーションの需要と供給は共に伸びている.その一方でアニメーション制作のコスト低減という課題は完全には解決されていない.この解決にはユーザの熟練度によらない自動化・汎用化が必要である.ユーザの熟練度に強く依存しているアニメーション特有の表現技法として,オーバーアクションなどによる誇張表現がある.誇張表現は現実世界では存在しないが,視聴者の理解を促進する有効な手段として知られており,これまでに様々な手法が提案されている. 本論文では誇張表現を付加した3D CGアニメーション制作をより容易にするユーザ支援システムを提案する.提案システムでは, 物理法則に基づく動作とこれを誇張する動作の結合を「基本動作」と定義し,結合の程度をユーザが指定することでさまざまな誇張表現を実現する.提案システムは誇張表現のパターン化と細部調整を兼ね備える.ユーザの熟練度にかかわらず容易に誇張表現を含む3D CG アニメーションを作成できる.
著者
桑原 明栄子
出版者
The Visualization Society of Japan
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.36, no.140, pp.29-32, 2016 (Released:2017-01-01)
参考文献数
9

オノマトペとは,様々な事象やモノに印象を付加する言葉であり,擬音語と擬声語を統括した言葉である.日本語は他言語に比べ,オノマトペの数が多く,使用頻度が高いとされている.本研究では,一般的に使用される日本語のオノマトペの印象を体系化し,それらが持つイメージを模様として可視化した.可視化した模様を評価し,活用することで可視化したイメージによって共通認識をどのように持つか,コミュニケーションを図るかなどをこれまでに調査,考察した結果を報告する.日本語オノマトペの印象を可視化してその印象について調査し,体感型システムとして実装した.そのことにより,新しい表現方法を提案し,日本語によるコミュニケーションの発展の一助になると考えられる.
著者
桑原 明日香 山原 恵子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.604-609, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

ライフサイエンス・臨床医学分野は,健康・医療をはじめ,食料,環境など広範な社会基盤の形成に寄与する分野である。これを支える科学技術について,1年間の俯瞰調査を実施し,2019年3月に報告書を発行した。調査によれば,最先端の機器による計測・分析で得られた大量の生命情報を定量化し活用する「データ駆動型」の研究が現在の潮流であり,今後もデータの取扱いがさらに大量化,複雑化すると考えられる。これに対応するには,高額な機器を共有しながら,数理・情報の研究者を巻き込み,各研究者からのデータ・情報を集約・統合するプラットフォームを作り,モデルベース解析を推進する体制を構築していくことが必要となる。
著者
中谷 哲郎 桑原 明 井上 京市 木田 芳隆
出版者
日本家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.304-310, 1985
被引用文献数
2

甲状腺機能の変動がおもにニワトリヒナの血液アスコルビン酸(AsA)濃度におよぼす影響について検討した。白色レグホーン種およびブロイラー専用種ヒナを用い,甲状腺機能促進剤としてヨードカゼイン(IC),また,甲状腺機能抑制剤としてチオウラシル(TU)をそれぞれ添加した飼料を3週間給与して,甲状腺重量と血液AsA濃度の関係について調べた。また,あわせて増体量,飼料摂取量および飼料効率,副腎および肝臓重量を測定した。<br>1.白色レグホーン種雄ヒナを用い,それぞれ2段階のIC(0.01%,0.03%)およびTU(0.02%,0.06%)添加の影響について調べた実験1において,IC添加による甲状腺重量の有意な減少,一方,TU添加による増体量の有意な減少,甲状腺重量の有意な増加および血液AsA濃度の有意な低下が認められ,これらの変動はIC中谷ほか:甲状腺機能と血液アスコルビン酸 309およびTUの添加量の多い方がより顕著であった。<br>2.ブロイラー専用種雄ヒナを用い,4段階のIC0.003%~0.012%)添加の影響について調べた実験2において,甲状腺重量についてのみ0.006%以上のIC添加で有意な変動が認められ,その重量はIC添加量の増加に反比例して段階的に減少した。また,この場合に血液AsA濃度はやや高くなる傾向を示した。この甲状腺重量と血液AsA濃度との間には有意な負の相関関係のあることが認められた。<br>3.ブロイラー専用種雄ヒナを用い,4段階のTU(0.005%~0.02%)添加の影響について調べた実験3において,甲状腺重量)よび血液AsA濃度について有意な変動が認められた。0.01%以上のTU添加で,添加量の増加に比例して,前者は段階的に増加し,後者は逆に段階的に低下した。また,この甲状腺重量と血液AsA濃度との間には有意な負の相関関係のあることが認められた。<br>4.以上の結果から,ニワトリヒナにおいて,甲状腺機能の変動にともなう甲状腺重量と血液AsA濃度との間には関連があり,甲状腺機能の抑制により血液AsA濃度は顕著に低下するが,甲状腺機能の促進によるその変動はわずかであることがわかった。このことは,ニワトリヒナにおいて,甲状腺機能の抑制がAsAの体内代謝にとくに密接な関係をもつことを示唆するものである。
著者
野村浩毅 桑原明栄子 佐々木和郎
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.385-386, 2012-03-06

遊戯療法の一つである箱庭療法は、人間の深層心理を探るために重要な両方であるが、一般に行うためには機材を買い揃えるコストがかかってしまうため、容易に行うことが難しい。本研究では粒子ベースの箱庭療法シミュレーションによって、コンピュータ上で容易に箱庭療法を体験できることを目標とする。
著者
安光 秀人 神田 省吾 桑原 明彦 山上 哲贒
出版者
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
雑誌
日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 (ISSN:13468111)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.276-289, 2009-11-24 (Released:2015-02-03)
参考文献数
17

近年,インプラント治療はかなり予知性が高くなってきた.一方デンタルインプラントは義歯に比べ機能的・審美的回復が可能になってきたが,治療期間の長さがリスクとしてあげられる. またわれわれ,日本人(モンゴロイド)の上顎前歯部においては元来唇側歯槽骨が薄いために,抜歯後の治癒過程で唇側の歯槽骨吸収をともない,その結果審美的回復が困難となることが多く,下顎臼歯部においても頬側の骨欠損がインプラント埋入後の予後に影響をおよぼしている. そこで今回インプラントの埋入を抜歯と同時に行うことにより,治療期間の短縮および経時的な骨吸収の回避が可能となり,審美的・機能的に良好な結果を得た2 症例の概要を報告する.さらに当院外来において2004 年4 月~2007 年12 月までの過去3 年8 ヵ月間に抜歯即時インプラントを行った患者22 名 (男性5 名,女性17 名) について臨床的検討を行った.上下顎合計で29 本埋入し残存率は96.6%であった.抜歯即時埋入によるインプラント治療は適切な審査・診断およびメインテナンスが行なわれることにより,欠損補綴の1 つとして有用な治療法であることが示唆された.
著者
桑原 明史 須田 武保 飯合 恒夫 畠山 勝義
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.21-26, 2009-01-01
被引用文献数
1 1

新潟県における大腸内視鏡検査関連の偶発症の実態を明らかにするため,アンケート調査を用いた検討を行った.対象は2000∼2004年に新潟大腸肛門病研究会の13幹事施設で行われた大腸内視鏡検査症例である.検査総数は,85,507件(観察のみ40,149件: 処置あり45,358件)であった.偶発症の発生頻度は,全体で198件,0.23%に認められ,処置あり群で8倍高くなっていた(観察のみ0.05%,処置あり群0.39%).偶発症の内訳は出血80.3%と穿孔13.6%が多く,発生頻度は出血0.19%,穿孔0.03%であった.出血の原因手技はEMRが76.7%で,治療はクリッピングが66%に行われていた.穿孔例の部位は96.3%が左側結腸であり,59.3%が観察行為のみで起きていた.穿孔に対する処置は85.2%で緊急手術が施行されていた.偶発症での死亡例は0.002%であり,いずれも穿孔例であった.<br>