著者
末永 恵子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.52-59, 2009-09-22 (Released:2017-04-27)
参考文献数
31

「人体の不思議展」は、プラスティネーションという技術で作製された人間の死体の標本を有料で一般公開する展示である。本稿は、同展の倫理的問題点について考察することを目的とする。死体には尊厳が存するので、安易な利用は許されず、相当の目的と意義が認められる利用に限定されるべきである。同展は、教育的展示を謳っているものの、標本の展示方法に問題があり、かつ教育効果についても疑問である。中国における献体といわれる標本の由来にも不透明な部分が多い。そもそも日本では現行法によって無償の「献体」を展示商品とすることは、不可能である。よって、同展は日中間の法律の間隙をぬって開催されていることになる。研究・教育用に真に必要な遺体供給の条件を整えるためにも、提供者の厳密な意思確認や倫理的条件を明記した法律が不可欠である。このような法の構想のためにも、現行法の間隙をついて開催される同展の倫理的問題点を抽出すことは、必要な作業であろう。
著者
末永 恵子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.52-59, 2009
参考文献数
31

「人体の不思議展」は、プラスティネーションという技術で作製された人間の死体の標本を有料で一般公開する展示である。本稿は、同展の倫理的問題点について考察することを目的とする。死体には尊厳が存するので、安易な利用は許されず、相当の目的と意義が認められる利用に限定されるべきである。同展は、教育的展示を謳っているものの、標本の展示方法に問題があり、かつ教育効果についても疑問である。中国における献体といわれる標本の由来にも不透明な部分が多い。そもそも日本では現行法によって無償の「献体」を展示商品とすることは、不可能である。よって、同展は日中間の法律の間隙をぬって開催されていることになる。研究・教育用に真に必要な遺体供給の条件を整えるためにも、提供者の厳密な意思確認や倫理的条件を明記した法律が不可欠である。このような法の構想のためにも、現行法の間隙をついて開催される同展の倫理的問題点を抽出すことは、必要な作業であろう。
著者
末永 恵子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.163-170, 2014-09-26 (Released:2017-04-27)

医学は人間の生命と尊厳を守ることを最終目的としているので、医学研究はヒューマニズムに基づく行為と見なされがちである。しかし、一般論では医学研究は肯定されても、それが実施される時期や地域や社会環境によっては、社会との調和のとれない状況を呈することがある。その研究の意義や有益性は認められても、社会状況にそぐわないとして批判され、再検討を求められている場合もある。本稿が取り上げる「東北メディカル・メガバンク計画」の問題は、まさにその代表例といえる。「なぜ今被災地で、ゲノム研究をするのか」という疑問の声は、計画のはじめから現在まで絶えない。そこで、この事業の推進論と反対論の主張を取り上げ、両者の議論の対立点を洗い出した上で、被災地における医学研究および医療政策はどのようにあるべきなのか、方向性やその意思決定の手続きについて考察することとしたい。