著者
田保 充康 長谷川 清 本多 正樹 大田 雅照
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第37回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.62, 2010 (Released:2010-08-18)

薬剤誘発性QT延長作用を引き起こす薬剤の多くがKチャネルの一つであるhuman ether-a-go-go related gene(hERG)チャネルを阻 害することによりQT間隔を延長させることから,hERG阻害に対する評価が創薬早期段階から実施されている。オートパッチクラン プにより多数の化合物のhERGスクリーニングが可能となり,膨大なスクリーニングの産物としてhERG阻害作用の弱い化合物を見出 すことが可能になってきた。しかしながら,薬効,薬物動態を含め薬剤としての特性を維持しながらhERG阻害の弱い化合物を効率的 に創製するためには,化合物の構造活性相関,物性情報,構造-hERG阻害相関,化合物とhERGとの相互作用などに基づいた合理的 な分子設計が必要と考えられる。特に化合物とhERGの原子レベルでの相互作用,すなわち,化合物とhERGの複合体の立体構造モデ ル情報は合理的な分子設計にとって大きなインパクトがある。hERG阻害作用を示す化合物のほとんどがhERGチャネル内部のポア領 域に結合して遮断作用を示すことが知られており,より効果的な分子設計方針を見出すためにはポア領域における結合様式を特定す ることが重要となる。hERGに対する相互作用部位として報告されているアミノ酸残基をアラニンに置換したmutant hERGに対する 化合物の阻害作用について検討し,その実験情報を考慮してhERG 3Dモデルに対する化合物のドッキングを実施することにより,化 合物の結合部位と結合様式を詳細に推定することができる。そして,この化合物/ hERG 複合体の立体構造モデル情報に基づいて, hERG阻害を回避するための合理的な構造変換アイデアの創製が可能となる。本発表では,当社の取り組みも合わせて,in vitro及び in silicoを統合したhERGチャネル阻害の回避方法について紹介する。