著者
野村 浩一 高須 賀豊 西村 博睦 本好 捷宏 山中 昭司
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.254-266, 1999
被引用文献数
2

メークアップ膜の化粧くずれは多忙な現代女性の大きな悩みの一つであるが, この問題に着目した研究例は少ない。化粧くずれにはいくつかのプロセスが考えられているが, われわれが世界に向けて行ったアンケートでは「テカリの発生」がその重要なシグナルであるという結果が得られた。本研究の目的はその光学特性変化の原因を追究し, この現象の新しい解決策を提案することであった。化粧くずれの主な原因が皮脂の分泌であることはよく知られている。われわれが今回ヒト皮脂の各成分についてその化粧くずれに対する影響を調べたところ, 皮脂中の不飽和遊離脂肪酸が主な原因である可能性が示唆された。遊離脂肪酸の存在は皮脂の融点の降下などを招き, 結果的に化粧膜中の粉体と濡れやすくなることによって化粧くずれを助長した。これらの結果はわれわれに, 化粧くずれを防ぐ新しい方法が遊離脂肪酸の選択的吸着であることを示した。その目的を達成するために, シリケート層を物理化学的に修飾した粘土鉱物が化粧品素材として検討された。検討した粘土鉱物は酸化亜鉛担持アルミナピラードクレー (以下ZA-pilc) である。ZA-pilcを配合したパウダーファンデーションは<i>in virto</i>および<i>in vivo</i>試験において化粧膜の光学特性の劣化が少なく, 結果として化粧膜のいわゆる「もち」を改善した。このような化粧くずれ防止の機能に加え, ZA-pilcはその遊離脂肪酸への吸着特性ゆえたとえばニキビ防止といった別の機能も考えられ, 事実, 今回行ったウサギを用いた実験でもその可能性が示唆される結果となった。