著者
坂口 けさみ 大平 雅美 湯本 敦子 上條 陽子 芳賀 亜紀子 徳武 千足 本郷 実 市川 元基 福田 志津栄 楊箸 隆哉
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.323-330, 2007-07

わが国では成人女性の30〜40%が尿失禁を経験しており,尿失禁によって社会的活動やQOLが著しく損なわれる場合が少なくないものと推測される。今回,尿失禁を経験している一般成人女性819人を対象としてQOLの実態およびQOLに関連する要因について検討し,以下のことが明らかになった。1.尿失禁経験者の約半数は,漏れなくなって欲しい,治らないと困る,知られたくない,恥ずかしいなどの社会的ストレスを感じていた。2.尿失禁経験者のおよそ20%は,趣味やレジャー,旅行や仕事など,外出や人との交流が必要な場面において影響があると回答した。3.QOLは,尿失禁の程度が重い者,出産回数が1〜2回,母親の尿失禁既往,分娩の異常,子宮膀胱下垂感,尿失禁以外の排泄障害の合併および骨盤底筋群体操を実施した女性ではそうでない女性に比較して有意に低下していた。以上,一般成人女性において尿失禁を有することがQOLを著しく低下させる要因となっていることが明らかとなり,尿失禁の発症を予防していくための啓発活動をより推進するとともに,個人がもつ心情を少しでも軽減できるようなかかわりが必要であることが示唆された。