著者
野崎 利博 片山 大輔 安藤 努 関野 正樹 朴 啓彰
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.55Annual, no.4AM-Abstract, pp.278, 2017 (Released:2017-09-13)

脳底部への磁気刺激は海馬を疾患するアルツハイマー型認知症に対して有効な治療法となる可能性がある.本研究では基礎実験として,脳底部に極力近い位置から脳底部を刺激するための励磁コイル(口腔内コイル)を設計製作した.設計では口腔内に収まるサイズの条件下で,脳底部付近での磁束密度が極力大きくなるように口腔内コイルの仕様を最適化した.口腔内コイルに周波数3 kHz,最大電流1923 A(平均値)の単発パルス電流を印加した時,脳底部を想定した位置(海馬左右およびその周辺の視床左右,視床下部)に生じる磁束密度を計測した.ここではコイル角を変化させ,磁束密度に対する角度依存性を調べた.その結果,磁束密度は全ての脳底部位置について,口腔内コイル角が35~40 deg. 付近の時に最大値が得られた.また,頭部組織や器官ごとに磁気および電気的特性を与えた頭部モデルを用いて有限要素法による数値シミュレーションを実施した.その結果,磁束密度は全ての脳底部位置について,口腔内コイル角が35~40 deg. 付近の時に最大値が得られ実験結果との整合性がほぼ認められた.さらに脳の直接の刺激量である誘導電流密度を数値シミュレーションによって推定した.
著者
朴 啓彰 熊谷 靖彦 永原 三博 片岡 源宗 北川 博巳
出版者
高知工科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

一般ドライバーと同質サンプリングと考えられる健常中高年の脳ドック検診者2193名(男性1196名,女性997名;平均年齢53.84±9.67 歳)を対象として、過去10年間における交通事故歴に関するアンケート調査を行い、頭部MRI所見の大脳白質病変と交通事故との関連性について多変量ロジスティック解析を行った。運転走行中の衝突事故など大きな事故に対して白質病変は、グレードに応じて有意の高い関連性を示した(年齢調整オッズ比は2.937:95%信頼区間1.260-6.847; P=0.013)。白質病変は、軽度でも大脳半球両側に存在すれば、視覚情報処理能力や注意機能の反応速度が有意に低下することを既に報告しているが、白質病変によるこれらの高次脳機能低下が、白質病変ドライバーと交通事故との因果関係を説明するものと推察された。因って、脳ドック受診者1150名(男性642 名、女性508 名、平均年齢52.1±8.9歳)に対して、警察庁方式CRT 運転適性検査におけるアクセル・ブレーキ反応検査結果と白質病変との関連性を調べた。アクセル・ブレーキ検査は、選択的反応動作の速さ、反応むら(変動率)、反応動作の正確さ(見落とし率)を測定する検査である。白質病変のグレードを説明変数に、見落とし率・変動率の高低を目的変数にして、多変量ロジスティック解析を行うと、見落とし率では、オッズ比1. 530(95%信頼区間;1.094-2.140、P=0.013)であり、変動率では、オッズ比1.348(95%信頼区;0.991-1.834、P=0.013)となった。安全運転に必要と考えられる認知判断機能の不正確さと反応むらに白質病変が有意に影響することが、交通事故の発生機序の一つとして想定された。頭部MRI で定量評価される白質病変グレードに応じた安全運転対策の可能性が示唆された。