著者
朴 蕙彬 Hyebin Park
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.124, pp.139-156, 2018-03-15

本稿の目的は,エイジズムに関する文献のレビューを行うことである。まず,先行研究の全体的な傾向を把握する。次に,エイジズムの構成要素を分析の枠組みにして日本のエイジズム研究の成果と課題を明らかにする。分析の結果,従来の研究の成果として多様な個人がもつエイジズム意識に関する基礎的データの蓄積が浮かび上がった。しかし,エイジズムに関する理論的考察が不十分であり,おそらくそれゆえに研究の焦点が心理的側面にもっぱら向けられる傾向があり,社会や文化などとの関連性には向けられていない傾向を発見した。これらの結果から,今後,エイジズムの理論的考察を深めるとともに,社会文化的要素を含めた包括的な研究枠組みを構築することが求められていると考える。
著者
朴 蕙彬 Hyebin Park
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.125, pp.77-104, 2018-05

本稿の目的は,社会文化にみられる高齢者のステレオタイプを分析することである。まず,高齢夫婦が主人公である映画『東京物語』(1953)とそのリメイク作品である『東京家族』(2013)を対象に,登場人物間の人間関係や援助行動,セリフの分析を通して,両映画にみられる違いを明らかにする。次に,映画分析の結果を既存のエイジズム研究で明らかになっている高齢者イメージと比較する。その結果,高齢者は悠々自適,親孝行,援助の対象,孫が好き,女性高齢者の自己犠牲というステレオタイプが明らかになった。しかし一方で,高齢者自身が他の世代を援助する行動は受動的なものから能動的なものへと変化し,その数も増加した。さらに,家族以外の人物による高齢者に対する表現(エイジズム)も多様になってきていることがわかった。論文(Article)