著者
伊藤 高史 Takashi Ito
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.138, pp.21-40, 2021-09

本稿は,筆者が別稿で検討した,メディア文化についての社会システム論的分析枠組みを実証研究に応用するものである。そのことによって,大衆文化としてのメディア文化において創造性が発揮されるメカニズムを社会システムの観点から明らかにするとともに,筆者が提示した分析枠組みの有効性を検証する。分析対象とするのは,今日に至るまで活躍するスター歌手森高千里であり,彼女が1980年代後半にデビューし,スターとしての大衆的認知を得る1990年代はじめまでの時期に焦点を当てる。彼女は文化産業システムによって敷かれた路線を従順に歩むアイドルとしてデビューさせられたが,スタッフの協力を得て独自の世界を切り開いていった。彼女の振る舞いを「キワモノ」「アイドルのパロディ」として解釈する「解釈共同体」が成立し,彼女に唯一無二の地位を与えていった。彼女がスターとしての大衆的認知を得る過程が示しているのは,社会システム論が示唆する通り,様々な社会システムが交差し相互作用する中での葛藤や協働が,資本主義社会のメディア文化に創造性をもたらしていることである。論文(Article)
著者
田島 悠来 タジマ ユウキ Tajima Yuki
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.119, pp.19-40, 2016-12

論文(Article)本稿では、「ご当地アイドル」のパフォーマンスを事例に、住民主体の地域振興のあり方について探究した。その際、パフォーマンス研究という枠組みを用い、「ご当地アイドル」のメンバーおよび運営にまつわる関係者に対して実施した聞き取り調査の結果をもとに、メンバー(=パフォーマー)にとってパフォーマンスがどのような効果を発揮し、それが地域振興とどのように関わっていったのかを、シェクナー(2006)が提唱したパフォーマンス機能の類型を参照しながら考察した。以上の結果、「ご当地アイドル」のパフォーマンスは、パフォーマーにとって、娯楽、アイデンティティの確認・変更、共同体の構築・維持、教育・説得という主として4つの機能を持つことで、若い世代が主体となる地域振興の可能性を提示していることが導き出せた。This paper examines the regional revitalization as an empowerment by local residents, through a case study about the activities of regional idols in Japan. In this article, I discuss what impacts were had on the members of idol groups (performers) and how their performances were related to regional promotion, using the framework of performance studies and having semi-structured interviews with regional idols and their stakeholders. Refer to Schechner's theory about the functions of performance (2006), the performances of regional idols have mainly four functions for performers: to entertain, to mark or change identity, to make or foster community, and to teach, persuade, or convince. At the same time, this implies the potential for the empowerment of young generations.
著者
空閑 浩人
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.108, pp.69-88, 2014-03

論文(Article)本稿は,日本人の文化を「場の文化」であるとし,それに根ざしたソーシャルワークのあり方としての「生活場モデル(Life Field Model)」の構想を試みたものである。それは,日本人の生活と文化へのまなざしと,日本人が行動主体や生活主体として成立する「場」への視点とアプローチを重視するものであり,日本人の生活を支える「生活場(Life Field)」の維持や構築,またその豊かさを目指す,言わば「日本流」のソーシャルワークのあり方である。その意味で,この「生活場モデル」研究は,確かに日本の「国籍」をもつソーシャルワーク研究である。しかし,それはいたずらに日本のソーシャルワークの独自性のみを強調し,そこに固執するものでは決してなく,日本の中だけに止まらない国際的な可能性をも持つものである。The purpose of this paper is to examine an idea of "Life Field Model" in social work theory and practice, while considering that Japanese culture is "the culture of field." This model thinks as important the look to Japanese life and culture, and the viewpoint and the approach to the "field" where Japanese people can be as the subject of one's action and life. Furthermore, so to speak, this model is "a Japanese style" of social work, which aims at maintenance, construction, and affluence of the "Life Field" supporting a life of Japanese people. In that sense, this study of "Life Field Model" is that of social work which surely has "nationality" of Japan. However, it never emphasizes and persists in only the originality of social work in Japan. This social work model may be effective as an international model of social work theory and practice.
著者
丁 偉偉 テイ イイ Ding Weiwei
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.116, pp.41-71, 2016-03

論文(Article)本稿は,1972年から2012年までの尖閣諸島問題に関する朝日新聞と読売新聞の社説を対象とし,内容分析と併せて計量テキスト分析を用い,質的・量的分析の組み合わせから検討したものである。両新聞のスタンスによって,関連社説における報道の重点および論調の相違があることが明らかになった。一方,尖閣諸島問題の顕著化とともに,尖閣諸島を自国の領土として定着したものとして報道する傾向は両新聞の関連社説に一致していることが読み取れた。In this paper, I analyzed the editorials of the Asahi Shimbun and Yomiuri Shimbun from 1972 to 2012 by using content analysis and quantitative content analysis. It became clear that the difference between the two newspapers' stances on the topic resulted in a difference in the emphasis of reports and the tone of the editorials. On the other hand, as the dispute over the Senkaku/Diaoyu Islands became more intense, the editorials of both Asahi Shimbun and Yomiuri Shimbun started showing a clear tendency towards portraying the Senkaku/Diaoyu Islands as "Japanese Territory".p.50 下から11行目と10行目に誤りあり (誤)②尖閣諸島を日本の固有領土とする記述, ③尖閣諸島の枕詞(補充表現)に関する記述 → (正)②尖閣諸島の枕詞(補充表現)に関する記述, ③尖閣諸島を日本の固有領土とする記述 p.51 表4の表記に誤りあり (誤)②=尖閣諸島を日本の固有領土とする記述;③=尖閣諸島の枕詞(補充表現)に関する記述 → (正)②=尖閣諸島の枕詞(補充表現)に関する記述;③=尖閣諸島を日本の固有領土とする記述
著者
黄 琬茜 コウ ワンセン Huang Wan-Chien
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.117, pp.179-199, 2016-06

論文(Article)台湾における国際結婚は年々増加し,それらの新移民の子どもが就学する数もどんどん増えてきている。2012年には,小中学校に就学している「新台湾之子」が20万人を超えた。台湾政府は,台湾が本格的な多文化社会になるために,近年,国際結婚家庭をサポートする政策やプログラムなどを積極的に推進している。そして,2012年には「全国新住民たいまつプログラム(全国新住民火炬計画)」を策定した。これは,新移民の人々と台湾人の関係をより良くするための,学校を中心として行われるプログラムと言える。この「たいまつプログラム」では,新移民の母語・文化を継承するため,小学校でその母語学習のコースを設けた。そして,このコースのために,『新住民母語生活学習教材』を開発し編成した。しかし,授業中,その教材はほとんど採用されていなかったことが報告されている。本研究の主な目的は,その教材の構成やその長所と短所を分析した上で,子どもの言語学習教材として適切であるかどうかを明らかにすることである。また,なぜ,その教材が教師に採用されなかったのかについても考察する。
著者
郭 芳 鄭 煕聖 高橋 順一 Hou Kaku Heeseong Jeong Junichi Takahashi
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.135, pp.1-14, 2020-12

本研究は,利用者本位の介護サービスのあり方に関する示唆を得るため,介護サービスの利用者の社会関係資本と生活満足度および人生満足度との関連を検討することを目的とした。A 県の30介護保険事業所における65歳以上の利用者を対象に,質問紙調査を行い,147名のデータを分析対象とした。調査内容は,基本属性,社会関係資本,生活満足度と人生満足度で構成した。全項目を投入してスピアマンの順位相関係数で検討した結果,介護サービス利用者の社会関係資本と満足度は有意な関連性が示された。家族,友人・知人,地域の人との交流などの社会関係資本が十分あると認識している利用者ほど,生活満足度および人生満足度が高いことが明らかとなった。これらから,利用者の社会関係を断ち切らない介護保険サービスの提供が求められること,地域に根差した施設づくりが重要であることを考察した。論文(Article)
著者
齊木 千尋
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.107, pp.21-54, 2014-01

本研究は,量的研究と質的研究を手がかりとして,子どもの学習をノートや感想文などの記録から分析し,それを量的に転換する授業分析の枠組みを提示した。事例分析によって授業分析の枠組みの検証を行なった結果,本研究の授業分析の枠組みは,授業構成等の有効性を実証するだけではなく,授業の成果から授業理論仮説の生成に利用可能であることが明らかになった。本研究の授業分析の枠組みは,質的研究要素と量的研究要素を併せ持つと言える。論文(Article)
著者
伊藤 高史 Takashi Ito
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.136, pp.141-159, 2021-03

本稿は,ドイツの哲学者ノルベルト・ボルツの「メディア論」の特徴を明らかにするものである。ボルツはニクラス・ルーマンの社会システム論から強く影響を受け,社会を個人間の「理性的な合意」に基礎づけようとするユルゲン・ハーバーマスの思想を徹底的に批判する。その一方で,メディアと社会との関係についての考察を展開する。我々が現実を観察するインタフェースとしてのメディアはデジタル化の時代を迎えて根本的に変化し,現実とメディア表象の二分法を根本的に解体し,人間の「感覚変容」をもたらし,「弱いつながり」が重視される時代を導いた。これらの考察は,メディア文化と身体性などの関係を社会学的に考える上で大きな示唆を与えてくれるものだ。This research note is to clarify the major characteristics of Norbert Bolz'theory. Having been significantly influenced by the social system theory of Niklas Luhmann, Bolz developed his own social theory and harshly criticized Jürgen Habermas's social theory based on the idea of communicative rationality. Bolz also developed his own media theory and argued that the digital media revolution transformed our senses of reality. The dichotomy between reality and media representation has radically fallen apart as we cannot determine the differences between the real and virtual. The latest media technology allows an immersion into virtual reality without making us aware of its existence. The computer science algorithm has established foundation in our society as a tool to control human beings. Digital media technology has also changed our image of social capital. Weaker ties in cyberspace have become more effective than the stronger ties in physical space among intimate persons like friends or family as the former is more informative than the latter. These arguments of Norbert Bolz can be effectively applied to the sociological analysis of contemporary media culture.研究ノート(Note)
著者
伊藤 高史 イトウ タカシ Ito Takashi Itoh Takashi
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.128, pp.21-38, 2019-03

論文(Article)「ジャーナリズムは今(現在)を伝える」という言葉で,ジャーナリズムの機能が語られることがある。本稿の目的は,このように表現されるジャーナリズムの機能を,ニクラス・ルーマンの社会システム理論の観点から明らかにすることである。ルーマンはマスメディアを「情報/非情報」の二値コードによる選択を行うシステムとして定式化した。この場合の「情報」とは,システムの作動を継続させていくものことを意味する。ジャーナリズムが「情報/非情報」の二値コードによる選択を行うとは,情報を通じて構造的カップリングの状態にある他の社会システムを作動させることである。ジャーナリズムが別の社会システムを作動させるその瞬間,過去と未来を切り離す「今(現在)」が生み出されるのである。
著者
塩田 祥子 シオタ ショウコ Shiota Shoko
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.116, pp.105-122, 2016-03

研究ノート(Note)新カリキュラムが導入され,実習内容は,実習生に社会福祉士の業務や役割をみせることに重点が置かれた。そして,実習内容にケアワーク実践を組み込むことに否定的となった。そのことは,ケアワーク実践なしに,実習生が利用者と関わり,関係を築くことを求めている。しかし,実習生がどのように利用者と関わり,利用者の理解を深めていくのか,その方法は明確ではない。そのため,実習においては,ケアワークとの差別化に固執するのではなく,社会福祉士としての利用者理解の方法,視点について具体的に考える議論が必要である。そして,実習生が利用者との関わりを大切にする環境を整えていくことが求められる。それは,実習内容からケアワークを取り除くといった安易なことではなく,ソーシャルワーク,ケアワーク,それぞれの独自性を尊重することにつながる。The content and practices of training in the new curriculum for social workers emphasizes teaching the trainees the duties and roles of certified social workers. It has turned away from the inclusion of hands-on practicum care work with the clients. Although the goal is to encourage trainees to interact and build relationships with their clients without having practiced care work. There are no clear standards or guidelines for approved methods for how to appropriately and effectively interact with clients or gain a better understanding of the clients. Hence, the training needs a discussion about the methods and perspectives by which certified social workers gain an understanding of the population that they serve rather than obstinately trying to differentiate it from care work. Moreover, the training environment should place great value on trainees' interactions with clients to create respect for the unique features of both social work and care work, which does not simply mean the removal of care work from the training content.
著者
板垣 竜太 Ryuta Itagaki
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.134, pp.141-177, 2020-09

本資料は,京都大学が保管する琉球民族遺骨の返還を求める集団訴訟で,京都地裁に提出した意見書である。本意見書は,まず人骨研究を中心とする近代人類学の系譜を整理したうえで,京都大国大学の人類学者が統計学的な手法を駆使しながら集団的に人骨研究を進めたことを明らかにした。そのうえで京都帝大の人類学者による琉球遺骨の収集には,解剖学教室の金関丈夫によるもの(1929年)と病理学教室(清野謙次人類学研究室)の三宅宗悦によるもの(1933年)の2系統があり,前者は台北帝国大学に移管され,後者が京都帝大に残されたことを論証した。最後に,人骨収集の態度において,本州・四国・九州における慎重さと,南島における手軽さが対照的であったことを示し,植民地状況においては「純粋」な科学的研究に対する法的・倫理的な歯止めが働かなくなったという意味で,それを「植民地主義的ダブルスタンダード」と呼んだ。資料(Material)
著者
矢内 真理子 ヤナイ マリコ Yanai Mariko
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.121, pp.55-79, 2017-05

論文(Article)本研究は,福島第一原子力発電所事故に関する週刊誌の報道における,言説の作られ方を明らかにすることを目的とする。日本の代表的な週刊誌である『週刊文春』『週刊新潮』『週刊現代』の3誌の2011年3月の記事を対象に,批判的ディスコース分析(CDA)をはじめとした,語用論の分野に基づいた分析方法を用いた。週刊誌が他媒体をどのような視点で捉え,報じているのかを分析することによって,週刊誌が他のメディアをどのように評価し、どのように原発事故に関する新たな「現実」を作り出そうとしているのかを明らかにした。This study aims to reveal how discourse was created in weekly magazine reports on the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Disaster. Analytical methods based in the field of pragmatics, including Critical Discourse Analysis (CDA), were used to study articles published in March 2011 in three of Japan's biggest weekly magazines: Shukan Bunshun, Shukan Shincho, and Shukan Gendai. By examining how these magazines viewed other forms of media and made their reports, this study explains how weekly magazines attempt to create new "realities" about the nuclear disaster, the methods they employ in trying to influence readers, how they view other forms of media, and what type of medium these weekly magazines are trying to present themselves as in the first place.
著者
板垣 竜太 Ryuta Itagaki
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.128, pp.39-65, 2019-03

記録映画「朝鮮の子」(1955年3月)は、東京都立朝鮮人学校への東京都教育委員会の廃校通知(1954年10月)をきっかけとして、それに対する反対運動のなかから製作された。本稿はこの映画の製作プロセスに注目し、そこに表れている関係性を歴史化することを目的としている。「朝鮮の子」の製作は在日朝鮮人の教育運動組織が推進し、在日朝鮮映画人集団が共産党系の記録教育映画製作協議会のメンバーとともに脚本、演出にあたった。荒井英郎が中心となって進めた脚本の<初稿>にもとづき、1954年12月下旬から撮影がはじまるが、内容に異論が出たため、1955年1月には一度撮影を中断し、京極高英を中心に脚本の<改訂稿>をまとめた。その過程で、子どもの語りを中心としたつくりに変わった。実際に作文を原典とするシーンは多くないものの、改訂により全体として朝鮮人の主体性がより強まる内容になった。この映画には、朝鮮人学校の教育実践とそれをとりまく教育運動をめぐる関係性が記録されており、とりわけ「敏子」の作文シーンはそうした特徴をよく示している。ただ、脚本改訂や資金難により当初の予定より完成が遅れた。その間に廃校反対運動は学校の各種学校化を前提とした条件闘争に転換しており、結果的に上映も不活発だった。The documentary film "Children of Korea (Chōsen no ko)", released in March 1955, was produced in the midst of the counter movements against the Tokyo Metropolitan Board of Education's decision in October 1954 to close the Tokyo Metropolitan Korean Schools (Tōkyōtoritsu Chōsenjin Gakkō). This article analyzes the making process of "Children of Korea" in order to historicize the political and social relationships which were reflected both explicitly and implicitly in the film. The documentary was produced by the Korean education movement organizations and was scripted and directed by the Zainichi Korean Cineaste Group (Zainichi Chōsen Eigajin Shūdan) with the professional assistance of Japanese members of the Documentary and Educational Film Production Council (Kiroku Kyōiku Eiga Seisaku Kyōgikai) which was led by the Japanese Communist Party. Based on the ‹first draft› of the scenario written by Arai Hideo, they started shooting from late December 1954. Facing with objections within the production staffs, however, they ceased shooting for a time and asked Kyōgoku Takahide to rewrite the scenario, what I call the ‹revised version›. One of the most radical revisions was that Korean schoolchildren had come to narrate in most of the scenes as if they read their own compositions. As a result, the representation of the independent identity of Zainichi Koreans had been emphasized in the film. Educational activities in Korean schools and relationships among educational movements at the time were vividly recorded in "Children of Korea". Toshiko/Minja's scene of reading her composition well-reflected such relationships and changes in the film. However, due to the scenario revision and financial difficulty, the completion of the film had delayed more than a month. During the delay, the strategy of the counter movement had shifted from the anti-closure of the Metropolitan Korean Schools to negotiation on conditions in privatizing the schools, ending up with the inactive screening of the film.論文(Article)
著者
鄭 煕聖 Heeseong Jeong
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.123, pp.21-35, 2017-12

本稿の目的は,当事者視点からセルフ・ネグレクト状態にある独居高齢者の支援ニーズを探索的に検討することである。セルフ・ネグレクトの状態にある65歳以上の在宅独居高齢者9名を対象に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を参考に分析し,さらにマズローの欲求5段階説を用いて上位カテゴリーにまとめた。その結果,対象者の発言内容から調査対象者の支援ニーズに関係する17個のコードと9個のカテゴリーが抽出された。最終的に,マズローの欲求5段階説に基づき,【安全欲求充足のための支援ニーズ】【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】【尊重欲求充足のための支援ニーズ】という3個の上位カテゴリーに分類できた。考察では,対象者の支援ニーズは段階に関係なく多様性を有しており,とりわけ,長期間放置されてきた潜在的ニーズを把握するためには当事者との親密な関係形成及びライフヒストリーに対する十分な理解が重要であることが示唆された。論文(Article)
著者
朴 蕙彬 Hyebin Park
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.125, pp.77-104, 2018-05

本稿の目的は,社会文化にみられる高齢者のステレオタイプを分析することである。まず,高齢夫婦が主人公である映画『東京物語』(1953)とそのリメイク作品である『東京家族』(2013)を対象に,登場人物間の人間関係や援助行動,セリフの分析を通して,両映画にみられる違いを明らかにする。次に,映画分析の結果を既存のエイジズム研究で明らかになっている高齢者イメージと比較する。その結果,高齢者は悠々自適,親孝行,援助の対象,孫が好き,女性高齢者の自己犠牲というステレオタイプが明らかになった。しかし一方で,高齢者自身が他の世代を援助する行動は受動的なものから能動的なものへと変化し,その数も増加した。さらに,家族以外の人物による高齢者に対する表現(エイジズム)も多様になってきていることがわかった。論文(Article)
著者
藤本 昌代 池田 梨恵子 フジモト マサヨ イケダ リエコ Fujimoto Masayo Ikeda Rieko
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.130, pp.107-141, 2019-09

本研究は1940年代の尾高邦雄の職業研究を起点に,社会学における職業研究,職場の人間関係,職業集団,職場での労働者意識等の観点から再確認し,日本の社会学におけるホワイトカラーの研究経緯について2000年以降の傾向をまとめたものである。分析の結果,社会階層研究などの個人の職業に関する研究が1950年代から継続され,後続する研究者が育成されているのに対し,尾高や同時代の多くの社会学者が盛んに行ってきた企業調査や同業者組合,職人集団等の職業研究は徐々に減少し,2000年以降も減少し続けていることが確認された。その一方で,ホワイトカラー職,専門職の働き方に関する個別の調査では,丁寧なフィールドワークや多様な方法を用いた重厚なものが多く,研究内容の充実度は継続しているといえよう。論文(Article)
著者
朴 順龍 パク スンヨン Park Soonyong
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.118, pp.13-27, 2016-09

論文(Article)Z刑務所の受刑者25人を対象に,課題として作成したロールレタリングノートと教育感想文の内容分析を行った.分析方法はMayring. P.(2004)の質的内容分析方法に基づいた.分析結果,教育期間によって受刑者の心理的変化を概念化し,9つのカテゴリーと24個のサブカテゴリーを抽出することができた.このような結果を通じて,本教育プログラムが受刑者自分のみならず被害者に対する認識の変化及び教育認識の変化に肯定的な影響を及ぼすことが示唆された.In this study, the role-lettering and the education review notes created during the application of this education program to 25 inmates at Z prison in Korea, will be employed. The analysis is based on the qualitative content analysis method by Mayring. P. (2004). By conceptualizing inmates' changes of psychology and acceptance of this education program, the result of the data analysis was identified with nine categories including 24 sub-categories in three periods. This result suggests that this program has positive effects on not only changes in the recognition of inmates themselves and victims but also their acceptance of this education program.
著者
朴 順龍 パク スンヨン Park Soonyong
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.114, pp.19-33, 2015-09

論文(Article)本研究では、韓国の性犯罪者の教育担当職員4人を対象としてインタビューを実施し、教育プログラムの施行過程上の問題点を明らかにした。インタビューを通じて教育過程の中で、受刑者の個人差、ラポールの形成、教育方法、教育態度によって教育参加度や教育効果が左右されることが分かった。結論として教育効果を高めるために、教育担当者と受刑者の間にラポールの形成、視聴覚資料、ローレタリング手法などを活用する必要があった。This article deals with the problems of educating sex offenders at correctional psychology therapy centers in Korea. The result of this study is based on interviews with four professional educators. In order to improve sex offenders' effectiveness of education, it is important to build rapport between educators and offenders, to prepare audio-visual materials helping them to understand the benefits of the education program, and to introduce role-lettering which puts them in another persons' position.
著者
森口 弘美 井口 高志 太田 啓子 松本 理沙 モリグチ ヒロミ イグチ タカシ オオタ ケイコ マツモト リサ Moriguchi Hiromi Iguchi Takashi Ohta Keiko Matsumoto Risa
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.123, pp.83-99, 2017-12

研究ノート(Note)本稿では,知的障害者と一緒に取り組んだ調査活動を紹介し,インクルーシブリサーチの観点から検討を加えた。その観点とは,1)言語だけに頼らない多様な方法を用いること,2)知的障害者のポジティブな変化,3)障害のない人の変化である.今後我が国においては,知的障害者が自らの権利や差別といった問題をテーマとした調査研究にアクセスしたり,そのプロセスに参加したりできる状況を作っていく必要がある.In this paper, we introduce the research activity "What kind of cafeteria everyone likes to go?" in which we tried to research with people with intellectual disabilities, and reconsider the research activity in some aspects related to Inclusive Research. The aspects are 1) Various methods not limited to languages, 2) positive change of people with intellectual disabilities, 3) change of people without disabilities. In Japan, few inclusive research has been done. It is necessary to make people with intellectual disabilities to be able to access and participate in researches on their own rights or discrimination.
著者
沼田 潤
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.107, pp.55-74, 2014-01

論文(Article)本研究は,どのような視点取得課題が外国人への共感を高めるのかを明らかにすることを目的としている。日系ブラジル人の解雇問題を取り上げ,その問題に関する二種類の文章と視点取得課題の有無によって,実験参加者(466名)は,4群に分けられた。本研究の結果から,外国人である日系ブラジル人の視点から書かれた文章を読み,日系ブラジル人の視点を取得する課題に取り組んだ群が,最も高い日系ブラジル人に対する平均共感得点を示した。また,少数派に無関心な者や保守的な考えをあまり有していない者も日系ブラジル人の視点を取得させる課題によって,外国人である日系ブラジル人に対する共感が高まった。