著者
片岡 郁雄 杉山 明正 別府 賢治
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-6, 2003-01-15
被引用文献数
1 57

光感受性の高いブドウ品種'グローコールマン'果実のアントシアニン蓄積における紫外線の関与について,成熟開始期の果実切片を用いて調査した.果実切片を太陽散乱光のもとで各種の資材;ガラス板,ポリオレフォンフィルム,ポリ塩化ビニール,紫外線除去塩化ビニールフィルム,エチレンテトラフルオロエチレンフィルム,ポリカーボネート樹脂板,ガラス繊維強化アクリル板で被覆して,72時間培養した.果皮のアントシアニン含量は,紫外線透過率の低い資材で被覆した場合,大きく減少した.人工的な紫外線照射(ピーク波長352nm)はアントシアニン蓄積を著しく促進させた.UV-A領域(320-400nm)での0.4W・m^<-2>までの紫外線照射によりアントシアニン含量は急増し,2.3W・m^<-2>まで高いレベルで平衡状態を保った.一方,白色光も8.5W・m^<-2>までの照射はアントシアニン含量を緩やかに増加させた.紫外線に4.1W・m^<-2>の白色光を組み合わせて照射した場合,アントシアニン含量はさらに増加した.以上の結果から,ブドウブローコールマン'果実のアントシアニン蓄積には紫外線成分が関わっており,施設の被覆資材の選択には,紫外線透過特性を考慮する必要があることが示された.