著者
杉山 梓
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1215, 2017 (Released:2017-12-01)
参考文献数
5

不安・睡眠障害や概日リズム異常は,双極性障害(BD)や統合失調症(SZ)において共通して認められる.両疾患において,不安の増悪は症状の重症化や治療薬効果の減弱をもたらす.扁桃体は恐怖やストレス応答,不安の表出において中心的な役割を担っている脳部位であり,扁桃体におけるソマトスタチン(SST)やニューロペプチドY(NPY)の発現は不安の減弱につながる.マウス扁桃体へSSTを注入すると抗不安様作用や抗うつ様作用を示し,またSST欠乏マウスでは不安様行動の増加を示す.扁桃体におけるNPYの減少が拘束ストレス後に認められるなど,SSTとNPYが扁桃体の働きに主要な役割を示す可能性が示唆されている.本稿では,BDとSZ患者の症状増悪とSSTおよびNPYの扁桃体における発現の概日リズム変動に関するPantazopoulosらの論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) McDonald A. J. et al., Neuroscience, 66, 959–982(1995).2) Pantazopoulos H. et al., Biol Psychiatry, 81(6),536-547(2017).3) Johansson A. S. et al., Schizophr Res., 74(1-3),17-23(2016).4) Seifuddin F. et al., BMC Psychiatry, 13, 213(2013).5) Berretta S. et al., Biol. Psychiatry. 62, 884-893(2007).