著者
平田 煕 杉山 民二
出版者
東京農工大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1)りん吸着力の強い黒ボク心土に,CaーP__ーを3濃度段階添加してVA菌根菌共生の有無下でダイズを生育させたところ,感染の抑制される高P__ー施用下であっても,ダイス子実生産とタンパク蓄績を高めることを実証した。2)本学農場の飼料畑(多腐植質黒ボク土)に生息するVA菌根菌の90%以上は,Glomus属およびAcaulospora属であるが,その中の優先種(未同定,黄色壁,Gl etunicatumに酷似、以下gYと略),本圃場には存在の確認されていないGlomus E_3(ヨ-ロッパでは顕著な植物生育促進効果が認められている種)に対するササゲ,キマメ,ラッカセイの生育反応を,γ線殺菌した黒ボク土(Bray IIーP__ー:26.1ppm)を培地として追った。ササゲ,キマメは,gYの共生なしには,その生活史を全うし得ず,子実着生は全くみられなかった。ラッカセイでは,子実着生はみられたものの,稔実は極めて貧弱であった。gE_3は,これらマメ科作物の生育前半には殆んど菌根形成を起さず,終段階でのササゲ,キマメに感染をもたらしたものの,それらの生育へのプラス効果は全くみられなかった。3)りん肥沃度の極めて高い条件下でのgY共生の有無によるダイズ栽培を行なった前年度のサンプルについて,導管出液及び発芽77日目の稔実終期の茎葉部からサイトカイニン画分をメタノ-ル抽出し,高速液体クロマトグラフィによって精製ののち,重水素標識サイトカイニンを内部標準とするガスクロマトグラフィ/マススペトロメトリ-(GC/MS)により,内生サイトカイニンの同定,定量を行なった。その結果,gY共生の有無で,イソペンテニルアデノシン(〔9R〕iP__ー)含量では,導管出液,茎葉部とも差がなかったが,gY共生区のリボシルゼアチン(〔9R〕Z)およびデヒドロゼアチンリボシト(diH〔9R〕Z)のそれは,対照区(非gY共生区)の2倍近い値を得(導管出液20nM/l,茎葉部4〜6pmol/g新鮮重),前年度のバイオアッセイ法による総サイトカイニン定量結果を,物質的に同定,定量することができた。