著者
慶野 英生 杉山 清泉 西沢 正 鈴木 輝明
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-7, 2005-07-15
被引用文献数
4

1)冬季波浪によるアサリへの影響を検討するため、個体識別したアサリを用いて、砂上への露出頻度と潜砂行動、肥満度および体内グリコーゲン含量との関係について調べた。2)殻長25mm程度の大型アサリは、水温8℃以下の冬季に露出を受けると、露出頻度およびその累積回数に対応して潜砂行動に影響が現れ、その影響は回復せず、その後も持続する。3)冬季波浪により露出や砂中での上下移動を繰り返したアサリは、冬季の低いグリコーゲン含量がさらに低下し、潜砂不能となったり砂中から這い出す場合がある。4)冬季の露出により、砂上に這い出した個体のグリコーゲン含量は、約10mg/gと他の個体に比べて顕著に低かった。5)冬季の露出1回当たりの体内グリコーゲンの減少量は0.05mg/gと試算され、アサリが這い出しを起こす限界値を約10mg/gと仮定すると、這い出し個体が出現する限界累積露出回数は約50回であった。6)冬季波浪によるアサリの死亡過程には、波浪による露出や砂中での上下移動の繰り返しによって活力を低下させ、潜砂できなくなった結果、岸側などへ運ばれ、へい死するシナリオに加えて、同じく波浪による露出や砂中での上下移動の繰り返しによって衰弱し、砂中にいた個体が自ら砂上へ這い出すことにより、結果的に岸側などへ運ばれ、へい死するシナリオが想定される。