著者
杉山 知行 中野 博 井村 裕夫 伊藤 憲一
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.46-55, 1984

線維増生を促進するリンホカイン, fibrogenic factor の慢性肝炎における肝線維化への関与を検討すべく, その活性 (fibrogenic activity, FA) を既報の標準法 (2-step 法) に代つて, 末梢血リンパ球と肝細胞膜特異抗原を同時に線維芽細胞培養系へ加える新たに工夫した簡易法 (1-step 法) で測定した.<br>慢性活動性肝炎 (CAH) 9例, 慢性非活動性肝炎 (CIH) 7例, 正常人8例では両法で測定を行い, 24例中22例 (92%) と高率にFAの成績は一致した. また 1-step 法によるFAは正常人8例中には陽性例なく, CAH 12例中8例 (67%), CIH 16例中4例 (25%) で陽性で, CAHのFA陽性率は正常人に比し有意に高く, 2-step 法による成績とほぼ同様であつた.<br>以上よりCHAの肝線維化機序の一因に fibrogenic factor が関与している可能性が示唆され, 又 1-step 法は簡便な為臨床上有用で 2-step 法に代りうるとの成績を得た.