著者
星野 一朗
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
實驗消化器病學 (ISSN:21851166)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.23-36, 1940

家兎ニ就テ、「フタル」酸、「アミド」、「ニトロ」、及ビ「メチル」安息香酸ヲ連續四十日ニ互リ注射セルニ、之等ガ本來示ス肝臟色素排泄機能亢進性ハ「ニトロ」安息香酸ノ場合稍々著明ニ衰へ、「フタル酸」ニテハ僅ニ不良トナルモ、「アミド」安息香酸及ビ「トルイル」酸ニテハ從前同様ノ促進度ヲ示セリ。組織學的ニハ「ニトロ」安息香酸ノ場合肝臟ニ「ズダン」III染色性物質ノ増多ヲ認ムルノミニンテ、他ノ藥物ニテハ著變ナシ。之等藥物ノ使用ヲ重ヌルニ從ヒ、「アミド」安息香酸及ビ「二トロ」安息香酸ニテハ最初血糖値稍々亢マル時期アレドモ後ニハ影響ナシ。又負荷糖處理能ハ「フタル」酸ニテハ一時不良トナルモ後ニハ恢復シ、「アミド」安息香酸ニ於テハ漸次不良トナリ、「ニトロ」安息香酸ニテハ之ニ反シ次第ニ促進ヲ示ス。「トルイル」酸ニテハ變化ヲ認メズ。
著者
恒川 眞清
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.685-701, 1942

古來中國ハ寄生蟲ノ樂園ナリト稱セラレ, 各地ニ於ケル調査アレドモ, 未ダ開封地方ニ於ケル報告ヲ見ズ.余ハ開封地方ニ於ケル寄生蟲ノ分怖ヲ調査セント企圖シ, 先ヅ華人學童ノ糞便檢査ヲ施行セリ.期間ハ昭和16年3月初旬ヨリ6月下旬ニ互ル約4箇月間, 被檢者ハ開封市立第1並ビニ第5小學校兒童957名 (男675名, 女282名) 及ビ扶輪學校兒童130名ナリ.檢査方法ハ糞便ノ少量ニ生理食鹽水ヲ注加, 割箸ヲ以テ攪拌ノ後濾過遠心沈澱ヲトリ, 生鮮標本及ビドナルドソン氏沃度「エナジン」標本2枚, 更ニハイデンハイン氏「ヘマトキシリン」染色標本2枚ヲ製作シ精密ナル檢鏡ヲ行ヘリ.<BR>檢査成績ハ市立小學校兒童ニテハ蠕蟲卵保有者ハ918名 (95.9%) ニシテ, 之ヲ檢出率高キモノヨリ列擧セバ, 蛔蟲867名 (90.6%), 鞭蟲353名 (36.8%), 十二指腸蟲97名 (10.1%), 東洋毛樣線蟲77名 (8.0%), 無鈎絛蟲67名 (7.0%), 蟯蟲52名 (5.4%), 有鈎絛蟲47名 (4.9%) ノ順ナリ.原蟲嚢子保有者ハ617名 (64.4%) ニシテ之ヲ檢出率高キモノヨリ列舉セバ, 大腸「アメーバ」348名 (36.4%), 「エンドリマックス・ナナ」304名 (31.7%), 赤痢「アメーバ」217名 (22.6%), 沃度「アメーバ」153名 (15.9%), 「ヂアルヂア・インテスチナーリス」10名 (1.0%) ナリ.<BR>開封扶輪學校兒童ニ就イテモ略々同樣ノ結果ヲ得タリ.但シ絛蟲ハ稍々少キガ如ク思惟サル.是ハ主トシテ階級ノ相違ニヨル食餌並ビニ生活樣式ノ差異ニ依ルモノナラン.<BR>次ニ混合感染状態ニ就イテ觀察セルニ, 蠕蟲類ニ於テハ, 蛔蟲ト鞭蟲ノ二重感染最モ多ク, 原蟲類ニ於テハ大腸「アメーバ」ト「エンドリマックス・ナナ」ノ二重感染多シ.<BR>寄生蠕蟲ト原蟲ニ於テハ, 蛔蟲ト「エンドリヤックス・ナナ」ノ二重感染最モ高率ナリ.<BR>年齢的差異ハ殆ド認メラレズ.既二幼年者ヨリ高率ニ檢出サル.<BR>性別ニヨル差異ハ男稍々高率ナルガ如キモ, 有意義ナル差ヲ認メズ.<BR>階級的差異ニ就イテ觀察セバ, 蛔蟲並ビニ病原性「アメーバ」嚢子ハ下層階級ニ多ク, 絛蟲及ビ非病原性「アメーバ」嚢子ハ上層階級ニ高率ナルガ如ク思惟サル.<BR>以上ノ調査所見ヨリ考察ヲメグラスニ, 開封地方ハ相當高度ノ寄生蟲淫浸地ナリト稱スルコトチ得.
著者
藤吉 俊尚 肱岡 範 今岡 大 原 和生 水野 伸匡 田中 努 田近 正洋 清水 泰博 丹羽 康正 山雄 健次
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.111, no.12, pp.2346-2354, 2014

症例は40歳代の男性.20歳から印刷業に12年間従事し,塩素系有機溶剤に曝露していた.肝機能障害で前医を受診し,肝門部胆管癌と診断され陽子線治療を施行したが,約3年後にリンパ節再発を疑われて当科紹介され,EUS-FNAで診断し化学療法を開始したが,2年でリンパ節が再増大し,外科的リンパ節摘出を施行した.その後1年8カ月再発していない.印刷業従事者が発病し,労災と認定された職業性胆管癌を報告する.
著者
早川 善平
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.652-657, 1937

慢性潰瘍性大腸炎は, 歐米には其の報告例かなり多く存在すれども, 本邦に於ては全く稀有である. Colitis gravisなる名稱はRosenheimの提唱したたものである. 併し多くの場合, 潰瘍を伴なふ關係上BoasはColitis ulcerosaと言つて居る. 尚更に急性なるものとの區別から, StmauβはColitis ulcerosa chronicaと言つて居る. 稻田氏も矢張り之に賛成の様である. 最近當教室に於て, 其の2例を經驗したから其の臨牀症状及び經過竝びに療法に就いて報告しやうと思ふ.
著者
渡邊 正一
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.373-436,en11, 1940

正常血漿及ビ1%葡萄糖加血漿ト鶏胎兒壓搾液トヨリ成レル培地内ニ種々ナル濃度ノ「カンタン」・「エビナス」・「トリプトファン」・「グリココル」及ゼ「ヤノール」ヲ添加シDeckglass法ニ依リテ鶏胎兒小腸組織ノ培養ヲ行ヒ, 其ノ發育・培地ノ變化・新生組織細胞及ビ母組織内ニ於ケル糖原出現等ニ及ボス之等藥剤ノ影響ヲ検索セリ.<BR>培養小腸上皮細胞ノ發育ハ高濃度ニ於テハ何レモ阻止セラノレ、モ, 一定濃度ニ於テハ各藥剤共ニ發育促進作用アルヲ認メ, 「フィプロプラステン」ノ發育モー定濃度ニ於テ促進サル、ヲ認ム.<BR>遊走細胞ノ出現度竝ビニ培地ノ液化ニ對シテハ諸種藥物ノ影響認メ難シ.<BR>又培養組織粘膜上皮細胞及ビ新生粘膜上皮細胞内糖原出現ニ對シ「カンタン」及ビ「エビナス」ハ各濃度共ニ促進シラ高濃度ノ「トリブトファン」・「グリココル」及ビ「ヤノール」添加ニヨリ糖加培地ニ於テ抑劇的ニ作用シ, 低濃度ニ於テハ影響ヲ認メズ.<BR>億組織筋層内出現ノ糖原量ハ「カンタン」及ビ高濃度「エビナス」添加ニヨリ輕度ノ増量ヲ見ル.環輪状竝ビニ膜様増殖ヲ示セル部分ニ於ケル糖原出現ニ對シテハ餐種藥醐添加ニヨル影響テ認メズ.
著者
松岡 義秋
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
實驗消化器病學 (ISSN:21851166)
巻号頁・発行日
vol.10, no.7, pp.997-1003, 1935

家兎ニ就テ、「<i>l</i>-アスパラギン」酸ノ一定量ヲ耳靜脈内ニ注射シ、肝臟色素排泄機能、膽汁分泌並ニ肝糖原質量及ビ肝脂肪量ニ及ボス影響ヲ檢索セシニ、膽汁分泌及ビ肝色素排泄機能ハ著明ニ亢進セラレ、一定期間連續耳靜脈内注射ニヨリテ肝糖原質量ハ増加、肝脂肪量ハ減少セラル、ヲ認メタリ。
著者
峯 徹哉
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.1443-1446, 2005-11-05

今回日本消化器病学会の卒後教育委員会を代表してTrain the Trainers(TTT)に参加させていただき卒後教育における指導者とはどうあるべきかを学んだ.TTTは消化器病(消化器内視鏡を含む)を専門とする指導者を育成するためにWGO(OMGE)/OMEDが協力して作った世界的な規模でのワークショップである.従来は各国の指導者を養成するシステムはマチマチであり,統一性がなかった.現在,医療の分野でもglobalizationが声高に叫ばれている中,教育においても標準化の道に進むのが正しいと思われる.そこにTTTが組織され,現在その実績をあげつつあると思われる.<br>
著者
木村 健 浅香 正博 勝山 努 川野 淳 斉藤 大三 佐藤 貴一 下山 孝 杉山 敏郎 高橋 信一 服部 隆則 藤岡 利生
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.199-207, 1999-02-05
被引用文献数
17

第二次<I>Helicobacter pylori</I>治験検討委員会が改訂した治験ガイドラインの主な内容は,以下の通りである.<BR>I.除菌の利点と問題点: 利点は消化性潰瘍の再発抑制効果,そして低悪性度胃MALTリンパ腫の改善,かつそれらの医療経済効果である.問題点は薬剤耐性の獲得,および除菌後に新たに生じる疾患があり得ることである.<BR>II.除菌治験の適応疾患: 除菌治験を速やかに行うべき疾患は,現在のところ,胃・十二脂腸潰瘍と低悪性度胃MALTリンパ腫である.<BR>III.除菌薬: 酸分泌抑制薬+抗菌薬2剤の3剤併用療法をfirst-line therapyとする.<BR>IV.存在診断と除菌判定: 存在診断は培養,鏡検,ウレアーゼ試験にて行う.除菌判定は,培養と鏡検に加えて<SUP>13</SUP>C尿素呼気試験を必須とし,血清学的検査法とPCR法を削除する.除菌判定の時期は,治療終了後6~8週とする.
著者
青山 庄 樋上 義伸 高橋 洋一 吉光 裕 草島 義徳 広野 禎介 高柳 尹立 赤尾 信明 近藤 力王至
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.312-321, 1996-05-05
被引用文献数
6

1994年春,ホタルイカを内臓ごと生食後に旋尾線虫幼虫type Xによると思われる急性腹症を呈した10例を経験した.症状では,全例に腹痛,9例に嘔気・嘔吐,4例に下痢,6例に腹水を伴った腸閉塞と1例に皮膚爬行疹を認めた.検査所見では,経過中において,全例に末梢血の好酸球増多,9例に血清IgE値増加が認められた.ホタルイカ内臓の約3%に旋尾線虫幼虫type Xが寄生しているとの報告から,その抗体価を測定したところ,9例中7例で陽性を示した.1例では,腹膜炎の診断で回腸部分切除術が行われ,組織学的に,局所的なびらんと粘膜下層内に著明な好酸球とリンパ球浸潤を伴う炎症所見が認められたが,9例は保存的治療で軽快した.
著者
村瀬 武吉
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.13-38, 1937

成熟健康ナル雌犬ニチリー・ヴエラ氏腸瘻管ヲ設置シ, 實験當目ハ室腹トナシ早朝ヨリ腸液ヲ分劃的ニ採取シ, 腸液量及ビ腸液中ニ含有サル・「アミラーゼ」・「リパーゼ」・「エレプシン」ノ3酵素ノ諸種藥剤ニヨル影響ヲ實験セリ.<BR>先ヅ自律神経毒ニヨル影響ヲ實験シタルニ, 「ビロカルビン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量ハ増加シ, 「アトロビン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量減少シ, 「エルゴタミン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量減少シ, 「ヒョリン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量ハ増加セル場合ト, 影響ナキ場合トアリタリ.「アセチール隔リン」注射ニテハ腸液量竝昨酵素総量ニハ影響ナシ.「アドレナリン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素総量ハ減少セリ. 次ギニ「ホルモン」製剤中「ビツイトリン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素総量ニハ影響ナシ.<BR>純體液性分泌刺戟剤ナル「ヒスタミン」及ビ渡薐草「エキス」部チ「スビナチン」ノ皮下注射ニテハ, 腸液量竝ビニ酵素總量ハ稍ゝ増加ヲ示シタリ.<BR>次ギニ榮養刺ナル葡萄糖・「グリココール」・脂肪乳化剤ナル「ヤノール」・「ヴィタミン」B剤注射ニテへ腸液量竝ビニ酵素総量ニハ影響ナシ.<BR>以上ノ實験ノ結果腸液中酵素含有量, 換言スレバ酵素濃度ハ如何ナル藥剤ニヨルモ殆ド影響ナキヲ認メタリ・尚「インシュリン」・葡萄糖注射實験ニ於イデ, 血糖ノ著明ナル變化アルニモ拘ラズ腸液分泌ニハ影響ナキコトヨリ, 腸液分泌ニ於イテハ體液神経性機轉ナキコトヲ認ム.
著者
池上 義輝
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
實驗消化器病學 (ISSN:21851166)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.1168-1177, 1937

男性「ホルモン」(「エナルモン」) ノ家難筋肉胃運動ニ及ボス影響ヲ「バロン」法ニヨリテ觀察セシニ、ソノ連績注射ハ、正常時ノ成熟並ニ幼若牡難ニ於テハ輕度ニ之ヲ亢進セシムルコトアルモ概シテ著シキ影響ナシ。然ルニ成熟去勢牡難ニアリテハ、去勢後低下セル胃運動機能ハ之ニヨリ著明ニ亢進シ、連績注射ヲナストキハヨクコノ状態ヲ保持スルヲ得。
著者
中島 淳 本多 靖 結束 貴臣 小川 祐二 今城 健人
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.11, pp.1966-1972, 2015

腸内細菌はNASH病態の1st-hitである単純性脂肪肝において,リポ蛋白リパーゼの活性化などを介して肝臓や脂肪組織に脂肪蓄積を増加させ,脂肪肝の形成に重要な役割を果たす.また,NASH病態の2nd-hitである肝炎の病態形成では腸内細菌は,1)腸内細菌の質的量的異常,2)腸管透過性亢進,3)肝臓におけるエンドトキシン応答性亢進,の3つの機序で重要な役割を果たすと考えられている.治療においては種々のプロバイオティクス,プレバイオティクスの投与が有効であることが臨床試験で示されている.今後はNASH病態に強く関与する腸内細菌の同定と治療への応用が求められている.
著者
今井 彌多郎
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
實驗消化器病學 (ISSN:21851166)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.188-202_2, 1934

家兎肝臟實質細胞ノ「ゴルヂー」氏装置檢出ニツキ諸種固定染色方法ヲ比較シ、青山氏法ヲ改變セルモノ最モ一定セル結果ヲ得ル事ヲ認メ、同法ニヨリ四塩化炭素、燐、「クロ、フオルム」ノ三種藥物及ビ總輸膽管結紮ニヨル肝臟障碍時ノ家兎肝臟實質細胞ノ「ゴルヂー」氏装置ヲ檢出セリ。ソノ結果總テノ肝臟障碍ニ於テ該装置ノ減少退化セルヲ認メタリ。即チ肝臟實質細胞内ノ本装置ノ退化ハ肝臟諸機能ノ低下卜略々一致ヲ示セリ。
著者
今津 浩喜 笠原 正男 城野 健児 竹下 健也 丹羽 基博 村上 正基 南 圭介 見元 裕司 田代 和弘 黒田 誠 溝口 良順 堀部 良宗 新井 一史 菅沼 正司 船曵 孝彦
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.1499-1505, 1992
被引用文献数
1

手術及び剖検にて得られた十二指腸癌症例中良好なDNA histogram の得られた12症例についてそのDNA ploidy pattern, proliferation index (PI) 及び proliferating cell nuclear antigen (PCNA) との相関を検討した. 12症例中75% (9症例) がDNA aneuploidy を示し, また, (91.6%) 11症例がPCNA染色陽性であつた. 組織型とDNA ploidy pattern, PI, PCNA score 及びPCNA陽性率との間に, また, DNA ploidy pattern とPCNA score 及びPCNA陽性率との間には特に相関がなかつたが, PIとPCNA score との間に相関傾向が, PIとPCNA陽性率との間に有意の相関が (P<0.05) 認められた. PCNAの陽性率の判定には方法論上いくつかの問題点も含まれているが腫瘍細胞の増殖率の判定においては, 少なくとも関連性があるものと考えられた.
著者
大岡 照二 児島 淳之介 清水 達夫 志水 洋二 高岡 愛明 門奈 丈之 山本 祐夫
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.54-62, 1980

慢性活動性肝炎に対して副腎皮質ステロイド(CS)が有効か否かを確定するため,臨床的• 機能検査的,また形態学的にも類似した症例を選び,26例にCSを投与し,37例を非投与として両群を対比検討した.これらの患者は著者らの共同研究下に2ヵ月から9年の経過中2回以上の腹腔鏡下肝生検を施行すると共に,月に1回の肝機能検査をし検討した.CSはPrednisoloneで30mgを初回1日投与量とし1週毎に10~5mgずつ減量し,毎日又は隔日5mgを維持量とした.CS群は肝機能上改善し(0.05>p>0.02),組織像では炎症反応を抑制し(p<0.01),線維化の進展を防止した(0.05>p>0.02).小量とはいえ長期連用による副作用が心配されたが,臨床的に副作用は少なく,また肝細胞内への脂肪浸潤の増加も軽度であつた.HBs抗原陰性例では,陽性例に比べその効果はやや良好であつた.
著者
岩味 永夫
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.573-592, 1942

犬ニ於ケル「アトファン」胃潰瘍ノ生成ニ關シテハ既ニ久米, 庄司, 武本及ビ岡田氏等ノ外, Wagoher, Barbour u.Flak等モ共ニ實驗的ニ證明セリ.余モ「キノフェン」ノ連續的經口的投與ニ依リテ全例即チ100%ニ胃潰瘍ノ發生スルヲ認メタリ.以下實驗ニハ「キノツェン」ノ連續酌經口的投與ニ依リ人工的胃潰瘍ヲ作リ, 之ニ「スチムリン」Mヲ皮下ニ注射シテ生理的食鹽水ヲ注射セシ對照例ト比較觀察セル成績ヲ發表セントス.<BR>糞便潛血反應ハ「スチムリン」M注射例ニ於テハ對照ニ比シ其ノ陽性度減少傾向大ナリ.<BR>體重ハ「キノフェン」投與後ニ於テハ何レモ滅少セをモ, 「スチムリン」M注射例ニ於テハ胃剔出前ニ於テ體重ノ復舊傾向ヲ見タルモ對照例ニ於テハ尚一層減少ノ傾向ニアリダリ.<BR>肉眼的所見トシテハ「スチムリン」M注射例ニ於テハ潰瘍面非常ニ小サク深ク陷凹セズ, 壊死組織・出血痕ヲ認メズシテ對照例ニ比シ治癒傾向非常ニ大ナルヲ認メタリ.<BR>組織學的所見トシテハ對照例ニ比シ粘膜上皮ノ再生高度ニ行ハレ肉芽組織ノ新生モ強ク, 一部結締組織ノ増殖ヲ認メ治癒傾向著シキヲ認メタリ.<BR>尚「キノフェン」ノ非經口約投與トシテ5%「ギトーサン」注射液5.0cc宛15日間注射セシニ全例ニ於テ胃幽門部粘膜ニ糜爛形成ヲ認メタルモ.「スチムリン」Mヲ同時ニ注射セシモノニテハ1例ニモ麋爛形成ヲ認メザリキ.<BR>以上ノ實驗ニ依リ「スチムリン」「ハゼキノフェン」胃潰瘍ニ對シテ治療的並ビニ豫防的ニ效果アル事ヲ認メタリ.
著者
田村 俊明 鈴木 史朗 大和 明子 須藤 一郎 原田 容治 望月 衛
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.1043-1047, 2000-08-05
被引用文献数
2

症例は39歳女性,皮膚黄染を主訴に入院となり肝機能障害とIgMHA抗体陽性を認め,急性A型肝炎と診断された.40日で軽快退院したが,退院後17日目に再度肝機能が増悪し再入院となった.抗核抗体陽性,高ガンマグロブリン血症を認め,肝生検では慢性活動性肝炎像を呈し自己免疫性肝炎と考えた.プレドニゾロン投与が著効し経過良好で現在も外来通院中である.急性A型肝炎を契機に診断した自己免疫性肝炎の報告例は少なく,我々は国際診断基準を含め自己免疫性肝炎の診断について若干の文献的考察を加え報告した.
著者
杉山 知行 中野 博 井村 裕夫 伊藤 憲一
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.46-55, 1984

線維増生を促進するリンホカイン, fibrogenic factor の慢性肝炎における肝線維化への関与を検討すべく, その活性 (fibrogenic activity, FA) を既報の標準法 (2-step 法) に代つて, 末梢血リンパ球と肝細胞膜特異抗原を同時に線維芽細胞培養系へ加える新たに工夫した簡易法 (1-step 法) で測定した.<br>慢性活動性肝炎 (CAH) 9例, 慢性非活動性肝炎 (CIH) 7例, 正常人8例では両法で測定を行い, 24例中22例 (92%) と高率にFAの成績は一致した. また 1-step 法によるFAは正常人8例中には陽性例なく, CAH 12例中8例 (67%), CIH 16例中4例 (25%) で陽性で, CAHのFA陽性率は正常人に比し有意に高く, 2-step 法による成績とほぼ同様であつた.<br>以上よりCHAの肝線維化機序の一因に fibrogenic factor が関与している可能性が示唆され, 又 1-step 法は簡便な為臨床上有用で 2-step 法に代りうるとの成績を得た.
著者
柳澤 昭夫 加藤 洋
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.1061-1071, 2004-10-05
被引用文献数
6

膵癌 (通常型浸潤性膵管癌) は膵管上皮を起源とするが, その発生過程には膵管上皮よりいきなり異形の強い癌病変として発生する過程de novo carcinoma (de novo ca) と腺腫を経て発生する過程adenoma-carcinoma sequence (ACS ca) とがある. de novo caはさらに発生してすぐに周囲へ浸潤する型intraductal non-spreding typeと膵管内をある程度広がったのちに浸潤する型intraductal spreading typeがある. 前者の膵管内の組織型像は平坦な増殖を示す癌 (Flat type) であり, 後者は丈の低い乳頭性増殖を示す癌 (Low papillary type) である. ACS caの大部分は膵管内乳頭性粘液腫瘍 (IPMN) であり, 遺伝子分析によってもACSの関係が証明された. この癌はたとえ浸潤癌であっても強い線維化内の浸潤でありその予後は良い.<BR>膵癌の発生母地は粘液細胞過形成であることが遺伝子分析により明らかとなったが, この上皮がどのくらいの期間後に癌化するか, またこの上皮からどのくらいの頻度で癌が発生するかの問題が残っている.