- 著者
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恒川 眞清
- 出版者
- The Japanese Society of Gastroenterology
- 雑誌
- 消化器病学 (ISSN:21851158)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.5, pp.685-701, 1942
古來中國ハ寄生蟲ノ樂園ナリト稱セラレ, 各地ニ於ケル調査アレドモ, 未ダ開封地方ニ於ケル報告ヲ見ズ.余ハ開封地方ニ於ケル寄生蟲ノ分怖ヲ調査セント企圖シ, 先ヅ華人學童ノ糞便檢査ヲ施行セリ.期間ハ昭和16年3月初旬ヨリ6月下旬ニ互ル約4箇月間, 被檢者ハ開封市立第1並ビニ第5小學校兒童957名 (男675名, 女282名) 及ビ扶輪學校兒童130名ナリ.檢査方法ハ糞便ノ少量ニ生理食鹽水ヲ注加, 割箸ヲ以テ攪拌ノ後濾過遠心沈澱ヲトリ, 生鮮標本及ビドナルドソン氏沃度「エナジン」標本2枚, 更ニハイデンハイン氏「ヘマトキシリン」染色標本2枚ヲ製作シ精密ナル檢鏡ヲ行ヘリ.<BR>檢査成績ハ市立小學校兒童ニテハ蠕蟲卵保有者ハ918名 (95.9%) ニシテ, 之ヲ檢出率高キモノヨリ列擧セバ, 蛔蟲867名 (90.6%), 鞭蟲353名 (36.8%), 十二指腸蟲97名 (10.1%), 東洋毛樣線蟲77名 (8.0%), 無鈎絛蟲67名 (7.0%), 蟯蟲52名 (5.4%), 有鈎絛蟲47名 (4.9%) ノ順ナリ.原蟲嚢子保有者ハ617名 (64.4%) ニシテ之ヲ檢出率高キモノヨリ列舉セバ, 大腸「アメーバ」348名 (36.4%), 「エンドリマックス・ナナ」304名 (31.7%), 赤痢「アメーバ」217名 (22.6%), 沃度「アメーバ」153名 (15.9%), 「ヂアルヂア・インテスチナーリス」10名 (1.0%) ナリ.<BR>開封扶輪學校兒童ニ就イテモ略々同樣ノ結果ヲ得タリ.但シ絛蟲ハ稍々少キガ如ク思惟サル.是ハ主トシテ階級ノ相違ニヨル食餌並ビニ生活樣式ノ差異ニ依ルモノナラン.<BR>次ニ混合感染状態ニ就イテ觀察セルニ, 蠕蟲類ニ於テハ, 蛔蟲ト鞭蟲ノ二重感染最モ多ク, 原蟲類ニ於テハ大腸「アメーバ」ト「エンドリマックス・ナナ」ノ二重感染多シ.<BR>寄生蠕蟲ト原蟲ニ於テハ, 蛔蟲ト「エンドリヤックス・ナナ」ノ二重感染最モ高率ナリ.<BR>年齢的差異ハ殆ド認メラレズ.既二幼年者ヨリ高率ニ檢出サル.<BR>性別ニヨル差異ハ男稍々高率ナルガ如キモ, 有意義ナル差ヲ認メズ.<BR>階級的差異ニ就イテ觀察セバ, 蛔蟲並ビニ病原性「アメーバ」嚢子ハ下層階級ニ多ク, 絛蟲及ビ非病原性「アメーバ」嚢子ハ上層階級ニ高率ナルガ如ク思惟サル.<BR>以上ノ調査所見ヨリ考察ヲメグラスニ, 開封地方ハ相當高度ノ寄生蟲淫浸地ナリト稱スルコトチ得.