著者
藤吉 俊尚 肱岡 範 今岡 大 原 和生 水野 伸匡 田中 努 田近 正洋 清水 泰博 丹羽 康正 山雄 健次
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.111, no.12, pp.2346-2354, 2014

症例は40歳代の男性.20歳から印刷業に12年間従事し,塩素系有機溶剤に曝露していた.肝機能障害で前医を受診し,肝門部胆管癌と診断され陽子線治療を施行したが,約3年後にリンパ節再発を疑われて当科紹介され,EUS-FNAで診断し化学療法を開始したが,2年でリンパ節が再増大し,外科的リンパ節摘出を施行した.その後1年8カ月再発していない.印刷業従事者が発病し,労災と認定された職業性胆管癌を報告する.
著者
中島 淳 本多 靖 結束 貴臣 小川 祐二 今城 健人
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.11, pp.1966-1972, 2015

腸内細菌はNASH病態の1st-hitである単純性脂肪肝において,リポ蛋白リパーゼの活性化などを介して肝臓や脂肪組織に脂肪蓄積を増加させ,脂肪肝の形成に重要な役割を果たす.また,NASH病態の2nd-hitである肝炎の病態形成では腸内細菌は,1)腸内細菌の質的量的異常,2)腸管透過性亢進,3)肝臓におけるエンドトキシン応答性亢進,の3つの機序で重要な役割を果たすと考えられている.治療においては種々のプロバイオティクス,プレバイオティクスの投与が有効であることが臨床試験で示されている.今後はNASH病態に強く関与する腸内細菌の同定と治療への応用が求められている.
著者
今津 浩喜 笠原 正男 城野 健児 竹下 健也 丹羽 基博 村上 正基 南 圭介 見元 裕司 田代 和弘 黒田 誠 溝口 良順 堀部 良宗 新井 一史 菅沼 正司 船曵 孝彦
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.1499-1505, 1992
被引用文献数
1

手術及び剖検にて得られた十二指腸癌症例中良好なDNA histogram の得られた12症例についてそのDNA ploidy pattern, proliferation index (PI) 及び proliferating cell nuclear antigen (PCNA) との相関を検討した. 12症例中75% (9症例) がDNA aneuploidy を示し, また, (91.6%) 11症例がPCNA染色陽性であつた. 組織型とDNA ploidy pattern, PI, PCNA score 及びPCNA陽性率との間に, また, DNA ploidy pattern とPCNA score 及びPCNA陽性率との間には特に相関がなかつたが, PIとPCNA score との間に相関傾向が, PIとPCNA陽性率との間に有意の相関が (P<0.05) 認められた. PCNAの陽性率の判定には方法論上いくつかの問題点も含まれているが腫瘍細胞の増殖率の判定においては, 少なくとも関連性があるものと考えられた.
著者
大岡 照二 児島 淳之介 清水 達夫 志水 洋二 高岡 愛明 門奈 丈之 山本 祐夫
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.54-62, 1980

慢性活動性肝炎に対して副腎皮質ステロイド(CS)が有効か否かを確定するため,臨床的• 機能検査的,また形態学的にも類似した症例を選び,26例にCSを投与し,37例を非投与として両群を対比検討した.これらの患者は著者らの共同研究下に2ヵ月から9年の経過中2回以上の腹腔鏡下肝生検を施行すると共に,月に1回の肝機能検査をし検討した.CSはPrednisoloneで30mgを初回1日投与量とし1週毎に10~5mgずつ減量し,毎日又は隔日5mgを維持量とした.CS群は肝機能上改善し(0.05>p>0.02),組織像では炎症反応を抑制し(p<0.01),線維化の進展を防止した(0.05>p>0.02).小量とはいえ長期連用による副作用が心配されたが,臨床的に副作用は少なく,また肝細胞内への脂肪浸潤の増加も軽度であつた.HBs抗原陰性例では,陽性例に比べその効果はやや良好であつた.
著者
杉山 知行 中野 博 井村 裕夫 伊藤 憲一
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.46-55, 1984

線維増生を促進するリンホカイン, fibrogenic factor の慢性肝炎における肝線維化への関与を検討すべく, その活性 (fibrogenic activity, FA) を既報の標準法 (2-step 法) に代つて, 末梢血リンパ球と肝細胞膜特異抗原を同時に線維芽細胞培養系へ加える新たに工夫した簡易法 (1-step 法) で測定した.<br>慢性活動性肝炎 (CAH) 9例, 慢性非活動性肝炎 (CIH) 7例, 正常人8例では両法で測定を行い, 24例中22例 (92%) と高率にFAの成績は一致した. また 1-step 法によるFAは正常人8例中には陽性例なく, CAH 12例中8例 (67%), CIH 16例中4例 (25%) で陽性で, CAHのFA陽性率は正常人に比し有意に高く, 2-step 法による成績とほぼ同様であつた.<br>以上よりCHAの肝線維化機序の一因に fibrogenic factor が関与している可能性が示唆され, 又 1-step 法は簡便な為臨床上有用で 2-step 法に代りうるとの成績を得た.
著者
岡野 邦泰 大槻 眞 前田 光雄 山崎 富生 坂本 長逸 大木 篤 佐伯 進 尤 芳才 神田 勤 馬場 茂明
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.75, no.11, pp.1825-1831, 1978

腎不全患者に発現する高アミラーゼ血症に関してアミラーゼクリアスラン/クレアチニンクリアランス比 (Cam/Ccr) およびアミラーゼアイソザイムの面より検討をおこなつた. 腎不全患者および血液透析患者において高頻度に高アミラーゼ血症が認められたが, アミラーゼアイソザイムの解析でこれらはすべて正常パターンであることが明らかにされ, 膵炎の合併は否定された. 急性膵炎で上昇する Cam/Ccr は Ccr 5ml/分以下の末期腎不全患者においても膵炎と同程度の上昇を認め Cam/Ccr のみからでは両者を鑑別できなかつた.しかしこれらの患者のアミラーゼアイソザイムは正常パターンを示しており, アイソザイムによる検討からCam/Ccr 上昇を示す腎不全患者と膵炎を鑑別することができた.
著者
三崎 文夫 林 恭平 渡辺 能行 川井 啓市
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.80, no.12, pp.2504-2511, 1983

嗜好品の摂取状況と潰瘍発症の関係を検討するため, 内視鏡検査直前にアンケート調査を行い, 男性胃潰瘍 (GU) 136例, 胃•十二指腸潰瘍 (GDU) 38例, 十二指腸潰 瘍(DU) 84例について, 発症前の煙草, アルコール, 香辛料, コーヒー, 紅茶, 牛乳の摂取状況を対照 (正常, 萎縮性胃炎) 65例と比較検討した. 症例全体での比較, 性•年齢でのマッチド•ペアによる比較, 2因子の組合せでの比較, 標準化相対危険度を検討し, 煙草がすべての潰瘍に強い危険因子であり, 香辛料がGUで, コーヒーがDUで, アルコールが他因子との組合せでGUの危険因子になりうることを認めた.
著者
安岡 秀敏 丸山 秀樹 古謝 亜紀子 飯田 智広
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.92-97, 2014

症例は69歳,男性.車を運転中に電信柱のワイヤーに乗り上げ横転.シートベルトは装着しており,表面的外傷や疼痛なくそのまま帰宅した.事故後6時間経過して嘔気・黒色便・吐血があり来院.CTで胃内に造影剤の漏出と思われる所見があり,緊急内視鏡検査を施行.噴門直下小彎に粘膜裂傷および活動性出血を認め,内視鏡的止血術を行った.鈍的外傷による胃損傷の頻度は少なく,内視鏡的止血術を行った症例はまれであり,報告する.<br>
著者
名和田 義高 濱田 晃市 田島 浩子 西野 徳之 中澤 敏弘 十林 賢児 斎藤 聡
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.109, no.8, pp.1394-1400, 2012

症例は84歳女性.1998年よりC型肝硬変でフォローしていた.2008年に心房細動・脳梗塞を発症しワルファリンカリウムの投与を開始したが,2011年2月に食道静脈瘤破裂で入院した際に,門脈血栓を認めた.ダナパロイドナトリウムを14日間投与し門脈血栓は消失した.ワルファリンカリウム投与中に門脈血栓症が新たに出現し,さらにこの血栓がダナパロイドナトリウムで消失した点より貴重な症例と考え,報告した.<br>
著者
斉田 宏 村上 元庸 関 真理 三宅 健夫
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.16-21, 1984
被引用文献数
9

レーザードップラー法 (LDV) によるラット胃粘膜血流測定を接触電極法による水素ガスクリアランス法との比較において検討した.<br>胃粘膜血流を反映する接触式水素ガスクリアランス法による血流値とLDVによる電気信号とは有意の (p<0.01) 相関を認めた.<br>又, 再現性も高く, 繰り返しの測定が可能であつた. LDVは, 時々刻々変化する粘膜血流に対して敏感に応答しながら連続的に記録する事が可能であり, 水素ガスクリアランス法にて測定不能な低血流をも容易に測定できた. 以上よりLDVは, 胃粘膜血流測定に有用な方法であり, 胃粘膜防御機構の一つである粘膜血流の研究に更に有効な手段となり得ると結論した.
著者
森岡 暁 馬場 正三
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1490-1500, 1988

家族性大腸腺腫症患者26例, 15家系の随伴病変を検討することを目的とし, まず家系別症例について手術時のポリープ数, 微小腺腫密度について検討した. また術前拡大色素内視鏡検査を行うことにより微小腺腫, 単一腺管腺腫を観察した. これらの症例における顎骨潜在骨腫, 上部消化管ポリープ, 眼底の色素異常, 甲状腺腫, デスモイド腫瘍など随伴病変の頻度を検討し, その臨床上の重要性を検討した. 特に眼底色素斑が患者に高率に認められ, 子供の保因可能者の50%に認められ, しかも1歳2カ月ですでに認められた症例もあつた. したがつて Gardner 症候群のみならず広くFACの保因可能者の marker として重要な位置を占めるものと考えられる.
著者
角川 陽一郎 武田 和憲 砂村 真琴 川口 信哉 小針 雅男 松野 正紀
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.1444-1450, 1990
被引用文献数
15

雑種成犬を用い, 十二指腸盲管法にて16時間後に出血性膵炎を認めたものを対象に蛋白分解酵素阻害剤続動注療法の効果を検討した. 盲管を解放後, 無治療対照群, Nafamostat mesilate(FUT-175)の持続静注群 (5μg/kg/分), 同量の腹腔動脈からの持続動注群の3群に分けた. 24時間後の膵組織内FUT濃度は静注群•動注群それぞれ905ng/g, 4453ng/gとなつた. 膵組織内 trypsin 活性は対照•静注•動注群それぞれ2.1, 1.4, 0.7nmol/min/mg蛋白, 膵の実質に対する壊死面積比はそれぞれ49.5, 25.6, 12.4%と動注群で著明に抑制された. また, 血清Ca値や, amylase, lipase 値も改善し, 重性急性膵炎に対する本法の有用性が示された.
著者
安本 潔 神代 龍吉 麻生 重仁 石井 邦英 村岡 晴雄 古寺 重喜 赤司 隆裕 古賀 郁利子 浜田 隆臣 鈴木 宏 上野 隆登 佐田 通夫 安倍 弘彦 谷川 久一
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.2590-2595, 1988
被引用文献数
4

急性肝炎および劇症肝炎例において血清亜鉛値, 尿中亜鉛排泄量を測定し, 同疾患にみられる低亜鉛血症の機序について検討した. 対照とした健常人例の血清亜鉛値は, 84.0±12.2μg/dl (M±SD) で, 劇症肝炎例では46.0±16.0μg/dlと低値を示し, 有意 (p<0.001) な差がみられた. 急性肝炎例での急性期血清亜鉛値は74.8±12.0μg/dlで, 健常人例よりも低値であつた. 1日尿中亜鉛排泄量は健常人例0.4±0.14mg/日であり, 急性肝炎例1.2±0.5mg/日, 劇症肝炎例2.4±0.6mg/日と高値を呈し, 健常人例に比べ共に有意 (p<0.001) な差がみられた. 急性肝障害での血清亜鉛の低下の原因の一つに, 同疾患にみられる低アルブミン血症および高アミノ酸血症により, 亜鉛とアミノ酸との結合が多くなり, 尿中亜鉛排泄量の増加が関わるものと推察した.
著者
山瀬 博史 二村 雄次
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.88, no.11, pp.2786-2794, 1991
被引用文献数
12

胆道癌取扱い規約に表層型, 表層拡大型を加え胆管癌46例の上流側の癌先進部を臨床病理学的に検討した. 表層型, 表層拡大型進展を伴う乳頭型, 結節浸潤型, 浸潤型の癌先進部は粘膜層にあり, 上流の非癌部の胆管より粘膜の丈が高く肥厚していたが, 線維筋層, グリソン鞘の線維層の厚さは同定度であつた. 表層拡大型進展を伴わない結節浸潤型, 浸潤型の癌先進部は線維筋層, 線維層内にあり, 上流の非癌部胆管より線維筋層, 線維層が肥厚し, 胆管内腔の狭小化を認めた. 胆管癌の術前診断にはPTCSが有用で, 粘膜の顆粒状変化, 腫瘍血管の有無に着目し, 選択的胆管造影では壁不整像, 狭窄所見の範囲を読影し, 術前に胆管の切除線を決定すべきである.