著者
杉本 浩利
出版者
九州大学
雑誌
九州大学心理学研究 (ISSN:13453904)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.67-78, 2000-03-10

本稿は,対人恐怖心性の高低による個人空間の諸側面の差異を調べ,その様相より対人恐怖心性各下位尺度について考察を試みるものである。個人空間については,その定義にみられる"領域"と"距離"の概念を取り出すために投影法的方法が用いられた。対象は大学の講義等を利用して募集した男性39名,女性62名(19-39歳)である。分析1として他者の面識度水準(どういう相手がどういう風に振舞っている状況か)によって投影法的個人空間検査に表れる各側面の変化について検討した。さらに,その変化が対人恐怖心性各下位尺度の高低によりどう異なってくるかを,分析2として検封した。その結果より,それぞれの対人恐怖心性下位尺度について考察を加えた。特に,<集団に溶けこめない悩み>や<自分や他人が気になる悩み>の高い者は,対人場面における対人距離と心理的距離にズレがある可能性が示唆され,<自分を統制できない悩み>は対人場面において「高次の間人性」(山根,1987)の発揮に関わる因子であることが示唆された。