著者
杉本 絢奈 本元 小百合 菅村 玄二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.150-160, 2016 (Released:2016-09-07)
参考文献数
47
被引用文献数
1

「首を傾げる」ことで,疑問や不審を抱くだろうか。大学生82名が箱に空いた角度の異なる穴を覗くことで,右傾,左傾,無傾の3種の姿勢をとり,対人認知,リスクテイキング,論理的思考という3課題を行った。姿勢操作はカウンターバランスされた。その結果,首を右に傾げると,傾げない場合よりも,社会的に望ましい人物の仕事への関心を低いと評価しやすくなり(p=.002, d=0. 9),また男性は首を左に傾げた場合,傾げなかった場合に比べ,危険な行動をとると判断しやすかった(p=.014, d=0. 8)。論理的思考には差が見られなかったが,仮に疑い深くなっても論理性の判断はつきにくいからかもしれない。対人場面では提示された人物描写を字面通りに受け取らなかったと解釈でき,首傾げ姿勢が慎重な情報処理を促すという仮説は,右傾に限って支持された。右傾で仮説通りの効果がみられた理由は,大半の人は生まれつき首を右に傾けやすいからかもしれない。左傾によって軽率な行動傾向が高まったが,これは不自然な姿勢を取ったためと考えられ,右傾によって慎重になるという結果と矛盾はしない。今後は姿勢の個人差を考慮した上で,参加者間計画にし,追試をすることなどが求められる。