著者
杉村 敬一郎 堀 悦子 栗原 良雄 伊藤 澄麿
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-7, 1984-01-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
12
被引用文献数
10 14

家畜の飼料原料として数多くの種類の飼料が用いられているが,その中で粗放的飼育の場合,家禽は節足動物,環形動物等を相当摂取していることが観察されている。そのうち,蛋白質含有量の高いミミズの栄養価については,これまで,吉田や目加田の報告があるがバッタについての報告はほとんどみあたらない。そこで著者は,ミミズを飼料として用いる場合,乾燥方法(自然乾燥,凍結乾燥)の違い,さらに,白然乾燥したバッタを加えての栄養価について検討を行なった。1. 一般成分分析の結果から粗蛋白質含量(以後CPとする)については,ミミズは魚粉とほぼ同等の値(60%)を示し,バッタは70%と魚粉よりも高い値を示した。2. アミノ酸組成は,ミミズは魚粉に比べてメチオニン,グリシン等が低い値を示し,バッタは魚粉に比べて全体的に低いアミノ酸含量を示した。3. 17日齢の雛を用いた消化試験の結果から,CPの消化率は,ミミズ,バッタともに70%以上を示した。その中でも凍結乾燥ミミズは87%と最も高い消化率を示した。粗脂肪の消化率は,凍結乾燥ミミズ,自然乾燥ッタともに88%と高い消化率を示したが,自然乾燥ミミズは59%と低い値を示した。その他の消化率においても凍結乾燥ミミズが最も高い値を示した。4. 可消化養分総量においては,凍結乾燥ミミズが81.9%と高い値を示し,自然乾燥バッタおよび自然乾燥ミミズはそれぞれ66.5%,59.6%であった。5. 代謝エネルギーにおいても,凍結乾燥ミミズが3.76Kcal/gと高い値を示し,自然乾燥バッタおよび自然乾燥ミミズはそれぞれ2.69Kcal/9,2.41Kcal/gであった。6. さらに,魚粉6%と凍結乾燥ミミズ,白然乾燥ミミズ,自然乾燥バッタでそれぞれ代替した飼料で飼養試験を行なった結果,増体重,飼料摂量および飼料効率の成績は魚粉区(対照区),凍結乾燥ミミズ区,白然乾燥ミミズ区,自然乾燥バッタ区のいずれの区間においても統計的に有意の差は認められなかった。7. また,飼養試験終了後,すばやく屠殺,放血した後体重に対する各臓器重量の割合を測定した。その結果,対照区と他の区間において統計的に有意の差は認められなかった。8. さらに,肝臓,腎臓,膵臓,脾臓および腿筋,胸筋の解剖を行なった結果,外観上の異常は各試験区とも認められなかった。これらの成績から,養鶏用飼料の動物性蛋白質源である魚粉の代替としてミミズの重要性が考えられる。