著者
杉田 篤子 杉田 和成
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.37-44, 2015 (Released:2015-03-10)
参考文献数
40
被引用文献数
4

ビタミンB3として知られているナイアシンは,生体内で補酵素として働く,nicotinamide adenine dinucleotide(NAD)とnicotinamide adenine dinucleotide phosphate(NADP)の合成に必須である.ナイアシンは皮膚ランゲルハンス細胞のG protein-coupled receptor(GPR)109Aと結合し,ナイアシン摂取過多時は,頭頸部に血管拡張によるフラッシングを誘発する.他方,ナイアシンの欠乏は,アルコール依存症,薬剤,栄養不良などに起因し,ペラグラに代表される光線過敏症を起こす.したがって,ナイアシンの作用を明らかにすることは,光線過敏症のメカニズムの解明や新規治療ターゲットの探索の上で非常に重要である.最近,ペラグラ患者およびナイアシン欠乏ペラグラマウスモデルでプロスタグランディンE合成酵素(prostaglandin E synthase: PTGES)の発現が亢進していることが明らかになった.さらに,ペラグラによる光線過敏症は,prostaglandin E2-EP4(PGE2-EP4)受容体シグナルが関与し,ケラチノサイトからのreactive oxygen species(ROS)を介して発症することが示唆された.本稿では,ナイアシンの免疫における役割および,ナイアシン欠乏による光線過敏症のメカニズムについて述べる.
著者
杉田 篤子
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.245-250, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
43

全身性エリテマトーデス(SLE)は,免疫複合体の組織沈着により起こる全身性炎症性病変を特徴とする自己免疫疾患であり,その中枢神経病変は SLE 難治性病態の一つとされており,しばしば多彩な精神症状を伴う。しかしながら,SLE に伴う精神症状に対する指標に乏しいため,診断や治療方針の決定に苦慮することが多い。近年,免疫学的なバイオマーカーの発見および脳画像技術の進歩により中枢神経病変の客観的な評価法が提唱されつつある。本稿では,全身性エリテマトーデスに伴う精神症状の特徴およびその評価方法に関して概説する。
著者
堀 輝 杉田 篤子 香月 あすか 吉村 玲児 中村 純
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.64-68, 2015 (Released:2017-02-16)
参考文献数
17

我が国の病院を受診するうつ病患者数が増加している。うつ病治療においては精神療法,薬物療法,環境調整などが行われるが,寛解率は決して高いわけではない。さらに,たとえ寛解に至り職場復帰したとしても,再休職率も高いことが知られている。つまり現在の治療に加えて非薬物療法の役割が期待されている。その中で運動療法における役割は大きい。うつ病治療における運動療法はノルアドレナリン神経系を介して精神症状の改善,活動性の維持によって就労の継続に寄与する可能性がある。またうつ病予防という観点から運動療法の役割も大きいとされ,抑うつ状態の軽減,睡眠リズムの改善効果が期待されている。