著者
杉野 仁美 澤田 雄宇
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.379-383, 2022-12-01 (Released:2022-12-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

60歳女性.検診で実施した超音波検査で左乳房B領域に充実性腫瘤を指摘された.精査目的に前医クリニックを受診し,左乳房に存在する腫瘍に対する穿刺吸引細胞診でclassⅣと診断された.更なる精査ならびに加療を目的に当院外科へ紹介され,両側乳腺および腋窩リンパ節に対する超音波検査が実施された.検査翌日より左乳房,左腋窩,胸部に紅斑,丘疹が認められ,皮疹の加療目的に当院皮膚科を受診した.皮疹は超音波検査でゼリーが接触した部位に一致していたが,乳房の悪性腫瘍を念頭に精査が行われていたことから悪性腫瘍の皮膚転移を除外するために皮膚生検を行った.紅斑より採取した皮膚生検の病理組織学的検討では,真皮上層血管周囲にリンパ球ならびに好酸球主体の炎症細胞が浸潤し,表皮は海綿状態ならびに液状変性が認められた.超音波検査用ゼリーas is(そのまま貼付)のパッチテストで陽性を示し,ゼリーによる接触皮膚炎と診断した.皮疹の治療としてベタメタゾン酪酸プロピオン酸エステル軟膏の外用を開始し,皮疹は速やかに消退した.後日,再度超音波検査が施行された際には,ゼリーは検査後に速やかに取り除いたため皮疹の再燃はみられなかった.繰り返す超音波検査用ゼリーの使用は皮膚障害部位からの感作により接触皮膚炎を起こしうる.しかし本症例では,超音波検査を実施した後に皮膚に付着したゼリーを拭き取る際に配慮することで接触皮膚炎の発症を防ぐことは可能であった.