著者
澤田 雄宇 中村 元信
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.77-82, 2018-03-01 (Released:2018-03-19)
参考文献数
26

皮膚は生体の最外層に存在する生体外と生体内を区分する重要な臓器であり,外的刺激からのバリア機能を主とした生体防御機構として働いている.食事や運動,睡眠などをはじめとした日々の生活習慣は,人が生きる上で欠くことのできない行動であるが,近年の報告では,この生活習慣が皮膚疾患と密に関連していることが報告されている.生活習慣と皮膚疾患とのかかわりについては,疫学的な調査を皮切りに,さまざまなアプローチでその病態に及ぼす影響が検討されてきた.皮膚科領域において,炎症性皮膚疾患の代表的なものとして乾癬があげられる.乾癬は特に生活習慣と密に関連しており,食事,睡眠,喫煙,飲酒などさまざまな因子から影響を受けている.乾癬の病態としてinterleukin (IL)-23/IL-17 axisを代表としたカスケードが重要であるが,日々の生活習慣はその病態に影響を与える可能性が考えられている.本総説では,日々の生活習慣がいかに乾癬の病態に関与しているかについて,疫学調査から具体的にメカニズム解析を行った研究を交えて報告する.
著者
杉野 仁美 澤田 雄宇
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.379-383, 2022-12-01 (Released:2022-12-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

60歳女性.検診で実施した超音波検査で左乳房B領域に充実性腫瘤を指摘された.精査目的に前医クリニックを受診し,左乳房に存在する腫瘍に対する穿刺吸引細胞診でclassⅣと診断された.更なる精査ならびに加療を目的に当院外科へ紹介され,両側乳腺および腋窩リンパ節に対する超音波検査が実施された.検査翌日より左乳房,左腋窩,胸部に紅斑,丘疹が認められ,皮疹の加療目的に当院皮膚科を受診した.皮疹は超音波検査でゼリーが接触した部位に一致していたが,乳房の悪性腫瘍を念頭に精査が行われていたことから悪性腫瘍の皮膚転移を除外するために皮膚生検を行った.紅斑より採取した皮膚生検の病理組織学的検討では,真皮上層血管周囲にリンパ球ならびに好酸球主体の炎症細胞が浸潤し,表皮は海綿状態ならびに液状変性が認められた.超音波検査用ゼリーas is(そのまま貼付)のパッチテストで陽性を示し,ゼリーによる接触皮膚炎と診断した.皮疹の治療としてベタメタゾン酪酸プロピオン酸エステル軟膏の外用を開始し,皮疹は速やかに消退した.後日,再度超音波検査が施行された際には,ゼリーは検査後に速やかに取り除いたため皮疹の再燃はみられなかった.繰り返す超音波検査用ゼリーの使用は皮膚障害部位からの感作により接触皮膚炎を起こしうる.しかし本症例では,超音波検査を実施した後に皮膚に付着したゼリーを拭き取る際に配慮することで接触皮膚炎の発症を防ぐことは可能であった.
著者
金子 栄 山口 道也 日野 亮介 澤田 雄宇 中村 元信 大山 文悟 大畑 千佳 米倉 健太郎 林 宏明 柳瀬 哲至 松阪 由紀 鶴田 紀子 杉田 和成 菊池 智子 三苫 千景 中原 剛士 古江 増隆 岡崎 布佐子 小池 雄太 今福 信一 西日本炎症性皮膚疾患研究会 伊藤 宏太郎 山口 和記 宮城 拓也 高橋 健造 東 裕子 森実 真 野村 隼人
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.1525-1532, 2021

<p>乾癬治療における生物学的製剤使用時の結核スクリーニングの現状について西日本の18施設を調査した.事前の検査ではinterferon gamma release assay(IGRA)が全施設で行われ,画像検査はCTが15施設,胸部レントゲンが3施設であった.フォローアップでは検査の結果や画像所見により頻度が異なっていた.全患者1,117例のうち,IGRA陽性で抗結核薬を投与されていた例は64例,IGRA陰性で抗結核薬を投与されていた例は103例であり,副作用を認めた患者は23例15%であった.これらの適切な検査と治療により,結核の発生頻度が低く抑えられていると考えられた.</p>