著者
李 〓遠 川原 晋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1166-1172, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
24

本研究は「共有」という概念を通じて都市の共同体の回復と雇用創出等の解決に取り組むソウル市の「共有政策」を対象とし、その政策の全体像を把握した上で、 「ソウル共有企業」へのアンケート調査から政策の有効性を評価することと、共有空間における行政からの支援の成果を明らかにすることを目的とする。結果として、まず、行政がソウル共有企業の認定および支援金の付与、そしてソウル共有企業の情報を市民に広報することで、ソウル共有企業やその活動に対しての市民からの信頼を生み出していることが分かった。また、柔軟な法制度の改正も共有活動を円滑にすすめる上で重要であることが明らかとなった。次に、共有空間に着目すると、共有空間認定型、共有企業認定型、共有空間整備型、自治区支援型の4通りの支援方法を通して、 共有概念を理解した市民によって積極的に利用されている。協力体制がよく構築されている共有空間委託型に関わる企業へのインタビューからは、今後この支援を受けた共有空間が若者たちの雇用創出や共同体意識の醸成に寄与するようなコミュニティ活動の拠点となることへの期待が高まっていることが確認された。