著者
石井 萌美 川原 晋
出版者
一般社団法人 日本観光研究学会
雑誌
観光研究 (ISSN:13420208)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.85-94, 2021 (Released:2022-06-04)
参考文献数
14

銭湯は,日本の生活文化体験を求める外国人等の需要や,文化的価値を評価する動きがある一方,家庭内浴槽の普及や,親族への事業承継の慣例化による後継者不足で減少傾向にある。本研究は生活文化資源として銭湯を継承する可能性を見出すため,親族以外が事業承継した事例に着目して次の 3 点を明らかにした。第一に,事業承継において必ず克服の必要な障壁を明らかにしたこと,第二に,レクリーション利用等の新たな需要獲得のための取り組みを把握したこと,第三に,銭湯独自の建築や設備,道具といった「銭湯資産」の意識的・無意識的な継承状況を把握し,今後の喪失リスクを検討したことである。
著者
齋藤 弘樹 川原 晋
出版者
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.5, pp.35-43, 2012-03

地域振興とスポーツ普及を一体として考える「ホームタウンスポーツ」が地域に果たす役割を考察するため、少年サッカーの普及を母体として設立されたプロクラブを有するという特徴を持つ東京都町田市のサッカーを事例として、次のことを明らかにした。まず、町田市の少年サッカーは、地域社会教育の一環として小学校教員や保護者等の地域コミュニティが支えて普及したこと、その指導者やOBを母体としてプロクラブFC町田ゼルビアが設立されたことで関係者に基本的理念が共有されている強み生かし、少年サッカーと共に、①子どもの教育の場の役割、②子どもの夢や目標を創出する役割、③地域の賑わいを創出する役割を果たしてきたことである。また、今後はそれらに加え、④地域コミュニティの再構築や郷土意識の醸成の役割への期待を受けていることも明らかになった。最後に、これまでに蓄積された潜在的人材や運営経験等を明らかにした上で、町田市ならではの「ホームタウンスポーツ」形成の方策を提言した。
著者
海老沢 結 川原 晋 平田 徳恵
出版者
一般社団法人 日本観光研究学会
雑誌
観光研究 (ISSN:13420208)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.75-84, 2021 (Released:2022-06-04)
参考文献数
13

未指定文化財や文化財の周辺環境までを含む歴史文化資源を保全・活用していくためには,行政のみならず,地域全体での取り組みが必要とされる。本研究では,民間アーカイブズの担い手,かつ,未指定文化財等の所有者であり,文化財にふさわしい活用の担い手になる可能性が高い存在として偉人子孫に着目し,その全国の基礎的動向を把握した。また日野市新撰組の子孫をケーススタディとし,子孫が果たしてきた役割や特徴を行政の活動と比較しつつ明らかにした。偉人子孫は,歴史文化資源を伝承とともに継承してきた存在であり,個人史的解説をするなど,行政博物館と歴史の解説手法に違いがあることや,それが観光的魅力となっていることを示した。
著者
李 〓遠 川原 晋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1166-1172, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
24

本研究は「共有」という概念を通じて都市の共同体の回復と雇用創出等の解決に取り組むソウル市の「共有政策」を対象とし、その政策の全体像を把握した上で、 「ソウル共有企業」へのアンケート調査から政策の有効性を評価することと、共有空間における行政からの支援の成果を明らかにすることを目的とする。結果として、まず、行政がソウル共有企業の認定および支援金の付与、そしてソウル共有企業の情報を市民に広報することで、ソウル共有企業やその活動に対しての市民からの信頼を生み出していることが分かった。また、柔軟な法制度の改正も共有活動を円滑にすすめる上で重要であることが明らかとなった。次に、共有空間に着目すると、共有空間認定型、共有企業認定型、共有空間整備型、自治区支援型の4通りの支援方法を通して、 共有概念を理解した市民によって積極的に利用されている。協力体制がよく構築されている共有空間委託型に関わる企業へのインタビューからは、今後この支援を受けた共有空間が若者たちの雇用創出や共同体意識の醸成に寄与するようなコミュニティ活動の拠点となることへの期待が高まっていることが確認された。
著者
平田 徳恵 川原 晋
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.26, no.63, pp.719-724, 2020-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
10

This paper clarifies the followings. (1) What impact do the two destinations that have won the Blue Flag Award in Japan expect from the authentication ? (2) Which standards of the various Blue Flag standards are effective and why? From Internet surveys on the development of Blue Flag authentication, we clarified that Blue Flag is an authentication that emphasizes social issues. In addition, our interview survey on two regions in Japan revealed that there are differences in the motivation for acquiring the Blue Flag Award and in the activities and in the contents the systems of activities by local residents.
著者
竹田 彩夏 川原 晋 野田 満
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.729-736, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
12

本研究の目的は、ケーススタディとして伊勢神宮内宮を用い、口話による観光ガイドツアーとの比較に基づいた手話による観光ガイドツアーの特徴や傾向を明らかにすることである。その上で、ユニバーサルツーリズムの推進を見据え、手話による観光ガイドツアーにおける情報提供の量及び質の向上に向けた考察を行う。本研究では以下の3点が明らかになった。1)手話による観光ガイドツアーを実施する組織には、手話による観光ガイドツアーのみを行う組織と、口話による観光ガイドツアーも実施する組織の2種類が確認されたが、いずれも数は極めて少ない。前者組織内における手話のレベルが一定ではないことや、観光ガイドツアーの実施において、ガイドの説明を視覚的に妨げる障壁の存在が明らかになった。2)口話による観光ガイドツアーに比べて、手話による観光ガイドツアーは話題の数が少なく、そのカテゴリーにも偏りがみられることがわかった。3)同じエリアを対象としていても、手話による観光ガイドツアーと口話によるガイドツアーは経路や停止地点、情報の提供場所等に差異があることが明らかになった。以上より、手話による観光ガイドツアーにおける考察を示した。
著者
清水 哲夫 川原 晋 片桐 由希子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.782-787, 2017

本研究は,高尾山地区の観光地マネジメント構想をサポートする駐車場マネジメントシステムの提案に向けて,事前予約制駐車場を配備した場合の駐車料金に対する支払意思額の特性を,来訪者への意識調査から詳細に分析した.自動車来訪者には,当日利用した駐車場をベースに,それが事前予約制になったり遠隔地になったりする場合に支払ってもよい予約料を,公共交通来訪者には,駐車料金を仮想的に与え,それが事前に予約できる場合に支払ってもよい予約料をそれぞれ尋ねた.分析の結果,平均的には駐車料金の半額相当が予約料として支払意思があると認められ,予約料に対する支払意思が高い層として, リピーター,子供連れ,駐車場確保の確実性を重視する層などを抽出した.
著者
岡崎 篤行 野澤 康 井上 年和 今村 洋一 川原 晋 大場 修 澤村 明 岡村 祐 池ノ上 真一 井上 えり子 松井 大輔 西尾 久美子
出版者
新潟大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

元来、料亭は宴席以外にも冠婚葬祭や公式会合、商談など日本人の生活と密着していた。しかし、現在ではその役割が他施設へ移り、都市の料亭街が消滅しつつある。一方で、和食や料亭の価値は見直され、重要な観光資源にもなっている。ひとつの重要な建築類型といえる料亭は、あらゆる日本の伝統文化を包括的に継承する場であり、花柳界や業界団体、支援・連携する行政、民間組織など様々な組織が関わっている。このように、ひとつの地域文化システムといえる料亭について網羅的視点で捉え、関連組織・活動の変遷、料亭の分布とその変遷、料亭建築の規模と保全活用の実態を明らかにする。
著者
賀 佳惠 川原 晋 岡村 祐
出版者
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The international journal of tourism science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.11, pp.19-25, 2018-03

本研究は、観光地化する歴史的町並み地区において、地域外資本の店舗が過度に入ることにより個性が喪失する問題に注目し、次のことを明らかにした。第一に、観光地化の進行する重要伝統的建造物群保存地区をねらって出店する、伝建チェーンと名付けた企業5社の存在を確認した。第二に、川越一番街商店街を対象とした調査から、地域内の様々な組織の主活動が町並み保全か、商業振興か、観光振興かの違いが、どのような店舗を外部資本店舗と捉えるかに違いがあること、第三に、外部資本店舗に対して、地区の個性を損なわないように誘導し、むしろ支える側の役割を期待する地域側の巻き込みが見られ、これに外部資本店舗も協力する「外部資本店舗の地域化」と考えるべき状況が見られたことである。