著者
李 春草 リ シュンソウ Ri Syunso
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.82, pp.78-88, 2015-03

「人間が猿になつた話」は、谷崎が中国旅行準備中に著した短編小説である。その漢学知識と「支那趣味」からして、その創作と中国旅行との関連性が考えられる。〈美女が猿に見込まれて山奥に連れ去られた〉という内容からみると、中国の古典小説「白猿伝」との類似性が目に浮かび上がる。更に、創作前後、谷崎と芥川龍之介との交流や創作上の類似性からみても、谷崎はある程度芥川を意識して書いた作品ではないかと推測される。
著者
李 春草 Syunsou Ri
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.87, pp.41-53, 2017-12

本論は南京の都市イメージを分析しつつ、それが物語の舞台とされた理由を明らかにした。また登場人物と『板橋雑記』(清・余懐)のそれとの類似性などから、『板橋雑記』が「人魚の嘆き」の新たな典拠であることを指摘した。さらにヒロイン‐‐人魚の実像を解明する上、彼女が純粋な西洋美の象徴であることを論述した。最後に東洋的要素の役割や物語の結末を検討し、作家の意図や小説のモチーフを探ってみた。