著者
小森 一輝 コモリ カズキ Komori Kazuki
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.90, pp.98-111, 2019-03

実践報告『羅生門』『枕草子』を通し、現代文・古文・漢文の関連性を明示的に指導する実践を行った。現代の日本語は、歴史的な日本語の上に成立したものである。ゆえに、現代文と古文・漢文との関連を自覚することは、国語の学習において重要な観点となる。しかし、国語教科書の単元は、現代文・古文・漢文に大別されており、これらの関連は必ずしも明記されていない。したがって、単元間の関連性や連続性を明示的に指導する必要がある。このような指導を行うにあたっては、従来、補助教材の発掘や作成が教員の負担となることが課題とされていた。稿者は、インターネットを用いて補助教材の発掘を行い、デジタルアーカイブが国語科の補助教材として有用であることを示した。
著者
佐藤 未央子 サトウ ミオコ Satoh Mioko
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.80, pp.38-52, 2014-03

谷崎の映画テクストをもとに、明治四十四年から大正五年に谷崎が受容した映画の概要と評価を確認し、いかなる要素が作品に抽出されているか分析した。映画の倒錯性、非現実性を好んだ谷崎は、映画タイトルを用いた修辞によって作品世界に同様の性質を付与していた。また谷崎の映画テクストにおいて特徴的な要素である俳優に対するまなざしは、この時期既に萌芽していた。更に、谷崎の映画受容とその記録からは、第一次世界大戦前におけるヨーロッパ映画の隆盛を看取できた。
著者
服部 功夫
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:3898717)
巻号頁・発行日
no.23, pp.14-38, 1984-03
著者
佐藤 未央子
出版者
同志社大学
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.72-85, 2011-12

谷崎潤一郎の映画体験は、作家論のなかで考察されてきたが、作品における映画的要素の分析は、解明の余地を残している。本稿は「アヹ・マリア」(大正十二年一月)に着目し、作中におけるセシル・B・デミル映画を、同時代資料を基に分析した。デミル映画は、主人公エモリの女性嗜好を変化させる機能を果たすことを検証した。これは谷崎の主題変化をも示唆しており、「アヹ・マリア」はその作品史において重要であると結論づけた。
著者
佐藤 未央子 サトウ ミオコ Sato Mioko
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.82, pp.89-103, 2015-03

大正中期における谷崎潤一郎の映画受容を分析するにあたり、本稿では「痴人の愛」(大正十三年~大正十四年)に焦点を当てた。ナオミが二重写しにされたさまざまな女優とその評価や位置付けについて、関連資料を用いて具体的に考察し、小説における当時の文脈を復元した。また映画観客としてのナオミの主体性や、「痴人の愛」が映画界に対して二重に同時代性を持つことを論じた。
著者
加藤 直志
出版者
同志社大学
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.163-151, 2011-03

まず、日本の子ども達の学力の傾向を踏まえ、教育心理学者藤村宣之の提唱する「協同的探究学習」による「わかる学力」向上の重要性を確認した。次に、「協同的探究学習」を国語教育で行うに際して、〈テクスト論〉に関連した、日本文学研究者からの提言が参考になると述べた。その後、実際の授業を紹介し、「自己探究」と「集団討議」を組み合わせる(=対話させる)ことが「わかる学力」の向上にも繋がるということを明らかにした。
著者
ケズナジャット グレゴリー
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.82, pp.104-116, 2015-03

本稿は一九五五年に発表された『陰翳禮讃』と『蓼喰ふ蟲』の英訳にいたる過程を検討する。二作における日本像は、戦後アメリカで流通した日本像と同様に一九世紀のオリエンタリズムに基づいたものであることを指摘する。また、翻訳者エドワード・サイデンステッカーと編集者ハロルド・ストラウスが定義する「翻訳に値する日本文学」を確認し、その上で当時の英訳はどのように読まれたかについて考察する。
著者
李 春草 リ シュンソウ Ri Syunso
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.82, pp.78-88, 2015-03

「人間が猿になつた話」は、谷崎が中国旅行準備中に著した短編小説である。その漢学知識と「支那趣味」からして、その創作と中国旅行との関連性が考えられる。〈美女が猿に見込まれて山奥に連れ去られた〉という内容からみると、中国の古典小説「白猿伝」との類似性が目に浮かび上がる。更に、創作前後、谷崎と芥川龍之介との交流や創作上の類似性からみても、谷崎はある程度芥川を意識して書いた作品ではないかと推測される。