著者
杉山 直儀 高橋 和彦 李 柄〓
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.186-194, 1967
被引用文献数
2

1. 塩化ビニル透明無滴, 厚さ0.1と0.05mm, 同有滴0.1mm, ポリエチレン0.1および0.05mmの5種類のフィルムを用いてトンネルを作り, その中の気温および地温を測定した結果, 次のような現象が認められた。<br>日中の気温や地温は無滴ビニルのほうが有滴ビニルやポリエチレンよりも高かつた。夜間の気温は曇天や雨天ではフィルム間に差はなく, 外気温よりも高かつたが, 晴天の夜はポリエチレンのほうがビニルより低くなり, しかもトンネル内がしばしば外気温よりも低くなつた。フィルムの厚さの影響はビニル無滴では認められたが, ポリエチレンの日中の気温地温にはほとんど認められなかつた。<br>2. 水滴のつかない条件で比較すると, 無滴ビニルと有滴ビニルの間の温度差はなくなる。フィルムの水滴の付着状態が日中のトンネル内の温度に影響を与えることが大きいと考えられる。<br>無滴ビニルとポリエチレンとの差は水滴がつかない状態でもなくならない。<br>3. フィルムの熱伝導度の差は無滴ビニルの日中の温度に対する影響を除いてはそれほど大きくはないようである。<br>4. 塩化ビニルとポリエチレンの光線の波長別透過率を比較すると, 可視部および赤外部の約6μまでの範囲ではほとんど差がないが, 6μ以上の長波長部に対してはビニルの透過率は低く, ポリエチレンは高かつた。この差がトンネル内の温度に影響し, ポリエチレンがビニルよりも夜間低温になる主な原因となつていると考えられる。<br>5. 晴れた夜にトンネル内の気温がしばしば外気温よりも低くなる現象について若干の考察を加えた。