著者
李 潤馥
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.107-121, 2016 (Released:2016-11-22)
参考文献数
28

韓国では朝鮮王朝時代から父系血縁,学縁,地縁が発達し,これは韓国社会の都市化,高度成長の過程で大きな影響を及ぼしてきた。特に1990年代後半から血縁,学縁,地縁が韓国社会の代表的な社会関係資本と指摘される中で、情報化の進展とともに韓国のオンライン上には数多くのカフェと呼ばれる様々な宗親,同窓会,郷友会インターネットコミュニティが構成されてきた。そこで本研究ではアンケート調査を通じて,宗親,同窓会,郷友会カフェへの加入時期,参加頻度,そして投稿頻度と三つの変数,即ち1)現実世界の門中・宗親会,同窓会,郷友会活動への参加,2)日頃親しくつきあっている親戚,同窓生,同郷人の数,3)人間関係の効用性に対する認識との関連について検討した。その結果,加入時期は同窓会活動への参加,日頃親しくつきあっている同窓生の数のみと統計的に有意な関連があり,加入時期が早いほど同窓会活動への参加回数及び日頃親しくつきあっている同窓生の数が多いということがわかった。しかし,加入時期とその他の変数は何れも統計的にほとんど無関係である。一方,参加頻度及び投稿頻度は二つとも三つの変数と統計的に有意な関連があった。宗親,同窓会,郷友会カフェへの参加頻度が多いほど,現実世界の門中・宗親会,同窓会,郷友会活動への参加が盛んであり,それらの人間関係は日頃親しくつきあっている親戚,同窓生,同郷人の数が多く,相互利益意識や実力主義の認知が深まっている。それを裏付けるように投稿頻度の分析結果も同様であった。これは韓国でインターネットコミュニティの普及とともに,血縁,学縁,地縁と係わる活動が活性化し,血縁,学縁,地縁が一次的な人間関係としての性格と共に,社会的な人間関係としての性格も併せ持っていることを示唆していると言える。