- 著者
-
高田 佳輔
- 出版者
- 一般社団法人 社会情報学会
- 雑誌
- 社会情報学
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.1, pp.89-105, 2016
<p>これまでMassively Multiplayer Online Role-Playing Game(MMORPG)に関する先行研究において,仮想世界内での活動は,問題解決および対人関係能力を高めるという結果が量的な検討によって示唆されているが,MMORPGにはさまざまな集団および難易度の活動があり,それらの区別が十分に行われていない。その一因としては,仮想世界内の活動について,質的な検討が未だ十分に行われていないことが挙げられる。したがって,本稿は,我が国で流行するMMORPGの1つであるFinal Fantasy XIVを対象に,成員が流動的な集団における高難度クエストに焦点を当て,活動の内実およびプレイヤーに求められる能力について参与観察およびインタビュー調査による質的検討を行った。</p><p> その結果,第1に,高難度クエストは,仕掛けられた罠に対処するための問題解決能力と,非言語的情報の多くが遮断された環境下での,対人関係能力が必要とされる環境であることが示された。第2に,高難度クエストにおけるプレイヤーの思考や行動を抽出し,コーディングを行うことで,高難度クエストでは「問題の明確化」,「根拠・事実の確認」,「原因の分析および解決策の案出」,および,「実行と評価」といったサブカテゴリーによって構成される合理的問題解決能力と,「同調行動」,および,「調和行動」によって構成されるチームワーク能力が重要であることが示された。さらに,以上の能力は,現実世界の集団作業で重要な2つのリーダーシップの機能として提示される「目標達成」と「集団維持」を包含し,それぞれがリーダーシップを介在せずに機能していることが示された。</p>