著者
李 長波 リ チョウハ Ri Choha
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.12, pp.29-52, 2014-03

研究論文(Article)本稿は、まずClay MacCauley's An Introductory Course in Japanese. (明治29年刊)の日本語研究について、指示詞の意味機能を一人称、二人称、三人称との相関関係によって捉えたことは、日本人としてほぼ同じ時期に同じ認識に達した草野清民著『草野氏日本文法』(明治27年稿、明治34年刊)と同じく特筆されるべきであることを論じた。そして、本書第三部の会話テキストを明治中期の東京語資料として、先行する日本語教科書、同時代の文学作品との比較を通じて、(一)人称代名詞、(二)否定過去の表現、(三)当為表現、(四)副詞、(五)補助動詞「~てある」、「~てをる」と「~ている」、(六)敬語、(七)接続詞、(八)終助詞的な「コト」の用法、(九)テキストの文体、(十)会話テキストにおける欧文脈の語法、などの点において、明治中期の丁寧な東京語話し言葉として充分な質と量を有するものであることを論じた。
著者
李 長波 Choha Ri
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 = Bulletin of Center for Japanese Language and Culture (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.13, pp.71-96, 2015-03

本稿は、上代歌謡と万葉集の「見ユ」の用例の分析を通して、一、「見ユ」と一人称との関連、二、上代語における「動詞・助動詞終止形+見ユ」の形式と「見ユ」の意味、三、「見ユ」の活用形の展開と助動詞への接続の文法史的な意味を考察した。主な結論は、以下のとおりである。一、佐竹昭広(1975)が指摘した「上代人の自己中心係数」は、上代歌謡と前期万葉において特に顕著なものであり、万葉集の中でも、万葉第三期、第四期と時期が降るにつれてすでに次第に低下していく傾向が見られた。これは文体史的な問題とともに文法史的な問題であると考えられる。二、上代語における「動詞・助動詞終止形+見ユ」の形式は特に上代歌謡に顕著な特徴であるが、万葉集を第一期、第二期、第三期、第四期に分けてみた場合、その用例が次第に減少していくのに平行して、「見ユ」の活用形、特に連用形を中心に助詞・助動詞が下接する用法が増えていく傾向が見られた。上代語の「見ユ」は視覚的にものが存在する意、すなわち「現前の視覚事実=事態」を表す動詞であり、その終止形終止法は現在を表すものと考えられる。三、「見ユ」連用形に下接する助動詞のうち、いわゆる「過去」の助動詞では「キ」が、いわゆる完了の助動詞では「ツ」が先行し、「ケリ」と「ヌ」はいずれも第四期において初めて用いられ、これは上代語の資料を一つの共時態として見るよりは、上代歌謡→前期万葉(万葉第一期、第二期)→後期万葉(万葉第三期、第四期)に分けて考えたほうが文体史的にも文法史的にも有効であり、「キ・ケリ」、「ツ・ヌ」の意味機能を考える上で示唆を与えると考えられる。「見ユ」連用形に下接する動詞、助動詞に見る空間的・時間的な「近vs. 非近」は話者への空間的、心理的な関係性として、上代語の人称体系、「一人称vs. 非一人称」との相関を窺わせる。
著者
李 長波
出版者
京都大学学術出版会
巻号頁・発行日
2002-05

第31回金田一京助記念賞受賞(2003)。京都大学学位授与論文をもとにした出版物。