著者
李 雯雯 筒井 淳也
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.157-170, 2021-10-31 (Released:2021-11-17)
参考文献数
36

本研究は,中国全体をカバーする中国家族パネル研究(CFPS)の2016年の調査データを用いて,都市部における成人子とその親との世代間関係におけるジェンダー差を分析するものである.従来の同分野の研究が異なった世帯に属する男女の比較を行うものであったのに対して,本研究では世帯単位の調査であるCFPSを用いることで,直接に同一世帯に属する夫婦間の差を用いて検証することができる.分析の結果,夫方の親との同居割合は,妻方の同居割合の5倍以上であることがわかった.さらに,世代間関係のジェンダー差は関係の内容に応じて異なることがわかった.家事援助やケアは夫方に,接触頻度は妻方に偏っている.夫婦の学歴差は世代間関係に独特な影響を持つことが示された.すなわち,妻の相対的な高学歴は世代間関係のジェンダー差をより平等にしており,妻の資源へのアクセスが夫婦間の均等な世代間関係に寄与していることが示唆された.