- 著者
-
村上 公久
- 出版者
- 聖学院大学
- 雑誌
- 聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.1, pp.109-134, 2013
ルイス・クラーク探検隊(1804-1806)は,米国において太平洋岸への最初の大陸横断を成し遂げ,現地踏査によって西部域についての多くの情報を得,独立間もない国家の北米大陸西部域についての認識と領土意識の形成に貢献した。第三代大統領トーマス・ジェファソンから任命された二人のヴァージニア州出身の軍人メリウェザー・ルイスとウィリアム・クラークが率いた探検隊は,この地域の植物,動物,地質,および地理の実地調査と,交易と通商のための内陸水路を探る任務を帯びていた。ジェファソンの目標はアジアとの商取引の目的のため太平洋岸に至る水運のルートを見つけることだった。ジェファソンはミズーリ川とその流域に沿ってアメリカ先住民の各部族に米国の主権を宣言し,ルイジアナ購入によって版図に入れられた地域の正確な情報を得ることを重要課題としていた。本試論は,アメリカ合衆国においては広く知られているがわが国では未だほとんど知られていないこの探検隊について,特にアメリカ合衆国を導いてヨーロッパ国家の一植民地から今日の超大国になる道を拓いたトーマス・ジェファソンの関与について観,ジェファソンの領土画定の試みをルイス・クラーク探検隊の派遣を通して探る。