- 著者
-
村上 壽枝
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2013-04-01
本研究は、リサーチ・アドミニストレーター(以下、URAとする)の役割が大学等の理系研究組織を基に考えられており、大学人文社会系組織におけるURA固有の役割については例が少ない事を問題意識と捉え、事例研究を通じてURAの活動促進に繋げることを目的としている。本研究の開始後に役割分類で参考となるURAスキル標準が、2013年度末の公開という情報を得たため、先ず人文社会系の研究支援事例のシンポジウム参加者ヘアンケートを行い、研究支援業務を行っていないとされる8名を含む45名の回答(回収率60%)を得てスキル標準の公開後に分析した。アンケートでは、支援業務を行っている者に限定した質問の結果、文系組織支援者はスキル標準の③「ポストアワード」支援が多く、理系組織の支援者はスキル標準の一部を除く、①「研究戦略推進支援」、②「プレアワード」、③「ポストアワード」、④「関連専門業務」の支援全般に携わっている傾向があることが分かった。また、バックグラウンドと支援の関連の詳細を調べるため、バックグラウンドがa)文理両方で1名と文系10名(内、理系支援と文系支援各1名以外は全学支援者)と、b)理系3名(理系支援者)のURAにインタビューした。その結果、a)では、スキル標準の①から④のそれぞれに支援該当者がおり、特に④の産学連携とアウトリーチに関する支援が多い傾向が見られた。また、一部のa)のURAからは、支援上、文理関係無いとした見解を得たが、b)のURAからは同様に文理関係無いとした見解を得た一方、実験や医療等専門分野の知識がなければ進められない業務情報も得た。このことから、URAのバックグラウンドと支援組織は文理関係なく支援は行えるとしても、レイヤーによって支援組織や分野の専門知識が必要な場合もあるとした示唆を導くことができた。日本のURAは、今はまだ黎明期であり、今後より多くの事例が見出されることが予想される。