5 0 0 0 創刊の辞

著者
村上 忠重
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.9-10, 1966-04-25

学会の機関誌を除くと,我が国では,消化器病学の専門誌が一向に育たないというジンクスがある.消化器病がとくに多いという我が国にあっては,不思議な現象のように感じられる.しかしそれにはそれ相当の理由があるであろう.たとえば消化器病の患者が余りにも多すぎ,余りにも一般的に過ぎるために,却って専門化しにくいとも考えられる.あるいはまた,消化器病には内科も放射線科も外科も病理も関与していて,その論文はそれぞれの分野の専門誌によって,すでに十分に消化されているのかも知れない.これらの現象はまた消化器病の専門家が現在十分に独立していないということにも通じよう. しかし最近は医学全体の専門化の傾向に推進されて,消化器病の専門化も静かにではあるが次第に進められつつあるように思われる.そしてそれには早期胃癌の診断学の発達が大きな拍車の一つになった.これまである程度片手間にでもできないことのない消化器病ではあったが,こと早期胃癌の診断に関する限り,X線の精密検査といい,胃カメラといい,ファイバースコープといい,さらには,生検,細胞診といい,何れも,もはや片手間にはできない知識と技術を必要とするようになった.そしてこの専門知識が現在の目本全国をあげての癌恐怖症に対する,唯一の現実的な解答だとすると,やはりこの道への専門化はさらに促進されなければならない事業である.この意味だけでも消化器病の専門誌が誕生すべき機運にあるといえるはずである.
著者
村上 忠重
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.9, 1977-01-25

11年前創刊の辞に,表題を取りあえず「胃と腸」とするが,いずれ「胃と腸」にする日が来るであろうし,またなるべく早くそうありたいという夢を記した. 10巻1号には創刊以来足かけ10年の経緯を振り返り,そろそろ「胃と腸」にしたいがもう暫く時期を待ちたいと述べた.それは編集委員の中に異論があって,「胃と腸」としたい気持は分るが,現実には内容がそこまで行っていないのではないかという自己批判があったからである.
著者
毛受 松寿 仙誉 軍一 吉野 邦英 平出 星男 村上 忠重
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.281-289, 1978-04-01
被引用文献数
2

胸部食道癌切除後の食道再建には胃や結腸が利用されることが多く, 空腸による再建術は実施されることが少ない. われわれは新しい観点から空腸による食道再建術を検討してきたが, 臨床例が38例に到達したので, われわれの行っている空腸による再建型式, 拳上空腸脚作製上の問題点, 胸骨柄切除胸骨後再建経路の作製法, さらに胸骨縦切による胸骨後経路, 吻合法ならびにその補強法, 術後管理の問題点について述べるとともに, 胸骨柄切除胸骨後経路による空腸利用の食道再建術は優秀な術式であるとの確信を得たのでその大要を報告した.