- 著者
-
村上 穣
小松 裕和
高山 義浩
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.1, pp.18-23, 2011-05-30 (Released:2011-08-18)
- 参考文献数
- 12
本邦ではいまだ感染症科のない医療機関が多く,そうした医療機関では院内感染への対応は各科の担当医師に委ねられている。とくにカンジダ血症のような重篤な感染症では必ずしも適正な診療が行なわれていないことが考えられる。我々は感染症科のない地域基幹病院である佐久総合病院において,2004年から2008年までに血液培養陽性でカンジダ血症と確定診断された全43例を対象に,カンジダの菌種,背景因子,治療の内訳,合併症,予後,米国感染症学会 (IDSA) ガイドラインの遵守率についてretrospectiveに検討した。カンジダの菌種はCandida albicansが最多であった。背景因子としては患者の84%に抗菌薬が投与され,79%に中心静脈カテーテル (CVC) が留置されていた。経験的治療としてはfosfluconazoleとmicafunginがそれぞれ35%を占めていたが,23%の患者は抗真菌剤が投与されていなかった。CVCが留置されていた34例中,診断後に抜去されたのは23例であった。カンジダ眼内炎の検索目的で眼科紹介が行なわれたのは42%であった。IDSAガイドラインの遵守率は42%で,カンジダ血症発症から28日後の死亡率は33%であった。本調査結果により当院ではカンジダ血症の診療について課題が多いことが明らかになったが,このような状況は感染症科のない地域基幹病院の一般的な現状と考えられる。今後はカンジダ血症に対するガイドラインに沿った適正な診療が行なわれる体制を,感染症科のない地域基幹病院でも定着させてゆくことが必要である。